三十三服目 怪氣学園S(9)
――…………あの蹴りの構え……見覚えがあるのじゃ。
何度も何度も、みんなで体育館倉庫のドアを蹴り続ける最中の事。
カノアは同じくドアを蹴り続ける仲間の一人を見るなり……なぜか脳裏に、過去に対峙した相手の顔を思い浮かべた。
しかし、それはアメリカでの出来事。
さらにはあの後、その相手は地元の警察に捕まったハズである。少なくともこの場にはいないだろう。
――……たまたまかのォ。
なのですぐにそう思い直し、カノアはみんなとドアを蹴り続け……ついにドアを蹴破る事に成功した。
「あー。疲れた」
「あ、明かりだぁ――――ッ!!」
「もう閉じ込められるのは勘弁だわ」
体育館倉庫から出るなり、璃奈と陽はともかく美彩は絶叫した。
カノアと険悪になった時くらいから、密室に閉じ込められた事によるストレスが溜まっていたのだろうか。
「それでクロードくん。次はどこを捜すんだ?」
一方で霧彦は、今後の方針をカノアに訊ねた。
敵は未だに、最初の襲撃以来接触してこない。代わりにこの学校に関係ある幽霊を差し向けてきている。いつまでもやられっぱなしでいるワケにはいかない。そろそろこちらが打って出なければ、いずれ力が消耗して……やられる可能性もある。
「……そうじゃな」
カノアは顎に手を当て考えた。
「場所については今まで通り一つずつ調べる。非効率かもしれぬが、その中のどれかに千桜がいる可能性もあるからのォ」
「…………確かに木下くんの安否も心配だが、どこにいるのか分からないんじゃ、それしかないな」
霧彦は、クラスメイトを見つけられない悔しさで顔を歪めた。
「そして室内を調べる際じゃが……また幽霊が出現するかもしれんから、調べる前に万が一に備えて、煙を室内に放ってから調べようと思うのじゃ。煙草の葉の残量的に厳しいが」
「は? 残量?」
「え、その煙草の葉って数量限定?」
ついでとばかりに告げたカノアの一言に、須藤の取り巻き達は唖然とした。
するとカノアは「それはそうじゃろ」と、なぜ訊いてくるのか疑問に思いながら言った。
「ワシの両親が勤める、健全な煙草の会社が作っている特別製の、不完全ではない煙草の葉なのじゃよ。この町での潜入捜査の際にたくさん支給されたが……さすがに校内全てを満たせるほど多くはないのじゃ」
「「「は?」」」
「え?」
「ん?」
「…………なんだって?」
初めて聞く煙草関連の情報だったため、一同は眉をひそめて怪訝な顔をした。
ちなみに上から、璃奈、須藤の取り巻き二人、美彩、陽、そして霧彦である。
だがしかし、冷静に考えればその可能性はあった事を六人はすぐに気付いた。
そもそもカノアは、潜入捜査のためだけに清雲高校へと転校してきた。しかも煙草付きで。そして数日前、その煙草は霧彦に見つかったりしたが、最終的には彼女へと返された。未成年であるハズの彼女に、である。
もしもその時に、カノアを助けるためのなんらかの力が裏で働いたとすれば。
彼女達煙術師に支援者が存在するのだとすれば、そういう事が起こるのも不思議ではないのではないか、と。
まぁそれ以前に、世界中を巡る彼女達煙術師の使命の関係上、支援者がいないと場所によっては騒動が起きるだろう。




