二服目 転校生カノア・クロード
読みやすいよう、実験として短く書きます。
「ワシの名はカノア・クロード!! メキシコ生まれのメキシコ育ち!! 趣味はパルクールと格闘技を少々!! 日本には……そうじゃな。ヲタ文化を知りたいのもあるがそれ以上に、家の都合で来たのじゃ!! 今は親の知り合いの家でお世話になっている!! いずれは恩返しがしたい!! 以上!!」
霧彦に小学生扱いされた少女・カノアは、朝のHRで自己紹介をする時、聞いている方が圧倒されるほど威勢良く自己紹介してみせた。
それを聞いた霧彦を含むクラスメイトは、その小柄な体型のいったいどこにそれほどのパワーがあったのか……と呆気にとられてしまう。
しかしそれも一瞬だった。
一人の生徒の「面白れぇヤツだな!」のひと声と拍手をキッカケに、他の生徒も彼女に拍手をした。
「はっはっはっ!! 良い声してるなカノアくん!!」
すると、そんなカノアの声にも負けない豪快な声が響いた。
二年B組のクラス担任にして、体育担当でもある尾之上國士先生だ。
「そうかそうか! お前はパルクールと格闘技をやるのか! 体育祭が楽しみだなみんな!?」
國士の意見に、クラスメイト達は「アハハ」と苦笑いを返した。
仮に運動神経が良くても、背丈の関係で、二人三脚のクラスメイト全員版である三十人三十一脚などは大丈夫なのかと不安になったのだ。
しかしそんな生徒達の不安に気づいていないのか、國士は「じゃあカノアくんの席は……璃奈くんの隣だな!!」などと転校生イベントをさっさと進めた。
そしてそんな國士と同じく生徒達の不安に気づかないのか、カノアは「うむ!」とまたしても威勢良く古風に返事をすると、すぐに、朝に霧彦と聖戦を繰り広げていた不良少女・璃奈の隣の席へと向かった。
「……う、うぜぇのが来た」
近づいてくるカノアを見ながら、璃奈はゲンナリした。
ただでさえ自分にはうざい幼馴染がいるのに、と心の中で思いながら。
一方その時、その幼馴染はといえば、
「…………本当に、ウチのクラスの転校生だったのか」
学生証などを出されても信じられなかったため、改めて驚いていた。
※
「よぉ転校生、ちょっと調子乗ってるんじゃねぇかオイ?」
それからは順調に、質問タイムなどのテンプレな転校生イベントをこなしていたカノアであった……が、残念ながら余計な質問タイムまでこなす羽目になった。
カノアの事を生徒間ネットワークで知った、清雲高校のいわゆる『番長』と呼称される存在に……残念ながら移動教室の時に目をつけられてしまったのである!!
「ッ!! 須藤政宗!! またお前か!!」
霧彦、そして二年B組の学級委員長と副委員長は、とっさにカノアをかばうように、カノアに声をかけた不良・須藤の前に立ちふさがった。
「インテリ野郎共はどいてろや」
しかし須藤は余裕の笑みで、吐き捨てるように言った。
彼の身長が二メートル近いせいもあるだろうか。彼から見れば霧彦達など、子供も同然であった。ましてや小学生並みに小柄なカノアは人形のように見えていた。だから彼は怯まなかった。
「俺が用があんのはその転校生……ってうぉ!?」
しかし次の瞬間。
須藤は目を丸くして驚いた。
なんとカノアが、廊下の壁を駆け上がり、須藤の頭上へと移動すると……彼の肩に飛び乗ったのだ。
といっても、肩の上に立ったワケではない。スカートであるにも拘わらず、肩車の体勢になるよう飛び乗ったのである。
「貴様、背が高いのォ!! ワシは貴様が羨ましいぞ!! 少しでもいいから背の高さを分けるのじゃ!!」
一瞬の出来事だった。
そしてその事実を理解するのに……須藤や他の生徒達は少しの時間を要した。
しかし、ただ一人。
風紀委員の霧彦だけは違った。
「こら! 廊下の壁を走るな!」
彼は風紀委員らしく、須藤の肩に乗っているカノアを叱った。
「はぁ!?」
それを見ていた不良少女・璃奈は唖然とした。
「…………そ、それもそうだな。スマヌ」
一方、叱られたカノアは……素直に謝り、須藤からスルスルと猿が木から下りるように下りた。
――…………いや、注意するトコそこなのか?
廊下にいた生徒全員の意見が、奇跡的に一致した。




