かいてきなたび 18
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辺り一帯が土埃や木屑の煙が巻き上がり、視界が極端に悪くなった。
賊の叫びや困惑や怒号が飛び交い、統制が取れなくなった混沌が訪れた。
「きょ…………教授⁉⁉⁉⁉一体何が?何を………なさったのですか?一体?」
流石のシェリー君も困惑しているようだった。
「あぁ………詳しく説明しよう。」
私が先程投げた石。
アレは賊に当てたかった訳では無く、その後ろ。
今にも崩れそうな建物(廃墟)の辛うじて支えとなっていた柱だった。
そこに向けて石を投げたのだ。
あの賊は自分の意志で避けたと思っていた様だが……残念ながら違う。
避ける事までが私の手の内だ。
私の手の内から逃れる事など出来ない……
………話を戻そう。
支えの柱は投石の衝撃でその役目を終え、今にも崩れそうな建物は崩れ落ちた。
そこで終わってしまえば相手の視線誘導くらいにしかならない。
この混沌は生み出せない。
ここで視線誘導でなく、混沌を生み出すのが、私ことモリアーティーのなせる業、モリアーティー・クオリティーだ。
話を投石の時点に戻そう。
私が狙ったのは確かに、『今にも崩れそうな建物(廃墟)の辛うじて支えとなっていた柱』だった。
しかし、狙いは廃墟一個の倒壊だけでは無い。
倒壊した建物の破片と倒壊の衝撃が別の廃墟の建物の大黒柱や支えている部分に丁度当たる様に倒壊の方向性や度合いを調整して、更にそれで倒壊した建物が更に倒壊を引き起こし、街全体が連鎖的に倒壊するようにしていた。
つまり、私の真の狙いは、『倒壊が連鎖的に起こる倒れ方をするように、今にも崩れそうな建物(廃墟)の辛うじて支えとなっていた柱を倒す事。』だった。
「こうして目の前の廃墟連続倒壊現象は可憐な少女の投石一つだけで起きた訳だ。」
「………………。」
シェリー君、絶句。
しかし、これだけではいけない。
この世界には魔法が有り、気流や風を操作することが出来るのであればあっという間にこの状況は収束していく。
問題はここから。
今の一時的混乱状態に加え、更なる混乱をもたらす事が出来るかで命運が分かれる。
「さぁ、更なる一手をこれから見せるとしよう。シェリー君、存分に学びたまえ。」
「解りました。教授。」
土煙の中、少女はこの混乱を混沌にすべく、この一手を次の一手へと繋げて行く。
安定の教授。
未だ三章目の途中ですが、教授が負けるイメージがドンドン出来なくなっていく今日この頃。
三章初めで『教授がヘマする訳無い!』という感想を複数の方から頂きましたが……最終的には驚かれる事も無くなりそうな予感がします……………。
鹿撃ち帽の探偵は一体全体どうやって彼を仕留めたのでしょうか?
教授の頭脳が火を吹くたびに登場予定皆無の見知らぬ名探偵がドンドン怪物性を帯びて来て…………………ホントどうやって倒したの⁉⁉⁉アレを!
2022/12/25この時の私は、数百話先の教授を知る由も無かったのです。まさかあんな風になるとは…




