長い夜
遅れてすいません。
なろうラジオ大賞も並行で行っていまして、今まさに煮詰まっています。(進捗は未だ半分未満です……)
「さぁ、片付けるとするか。」
「はい、では………………キャァ!」
小さくシェリー君が叫んだ。
その先にはミス=フィアレディーが置いていったランプがあるのみ。
「どうしたんだね?シェリー君?」
「ハ………蜂が…………そこに………」
そう言って指差した先にはランプに群がる蜂が居た。
あれは………図鑑で見た夜行性の蜂だったか?
「心配いらない。あれは君を刺さない。というか、針が無いから刺せんよ。
そして、あれは蜜を集めるタイプの蜂で、原則として蜂蜜に群がるタイプだ。」
「で……デもッ、私の香水が……」
「君の香水は割れたのでは無かったのかね?その前に使ったのかね?」
「……………あ………」
確かに私が渡した香水は「ハニーレモン」。確かに蜂蜜臭であったが、剣術の授業後に割れていた筈だ。
パニックになって忘れていたか。
これは今後の課題だな。
『基本その9:パニックは最も危険な物の一つである。』だ。
パニックを起こしそうな時=大概危険な状況
危険な状況でまともな思考が出来ず、動けなければ即死に繋がる。
如何しようか?
彼女を敢えてパニックを起こしそうな場所に送って場慣れさせるか………?
いや……面白そうだが止めておこう。可能な限り。
「予備の別の香水を渡しておいたはずだが………有るかね?」
「有ります。そうでした。」
そう言って懐から小さな瓶を取り出す。
こちらはハーブを主とした虫除け効果の有る物だ。
こんな事も有ろうかと調合しておいた。
「では、始めようか。」
「はい。」
ランプに蜂が群がる中、木剣やら金属製の棒やら何やらが散らかった片付け甲斐のある倉庫の片づけを開始した。
今日の夜は長くなりそうだ。
木剣を拾い、かごに入れる。
「更衣室で何があったか訊いていいかね?」
今の内に訊いておいた方が良い。
「はい。実は」
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
着替えていた時の事でした。
私が着替え終わって教授から貰った香水を使おうとしたところ………
「あら、ミス=シェリー?それは何でして?」
教授曰くナクッテ嬢。
ミス=ナークが私の持っていた香水瓶を見つけたのです。
「はい、これは自分で作った香水です。」
興味深そうに見ていましたので瓶を見せると
パシ
香水瓶を取られてしまったのです。
「あっ…あの………」
返して下さい……そんな言葉を言おうとして
ビチャ
香水を垂らして匂いを確認するミス=ナーク。
「へぇ、趣味が良いじゃない。」
「あ………有り難う御座います。」
意外な言葉を掛けられて驚きで一瞬硬直してしまった。
それがいけませんでした。
トプトプトプトプ…………
ミス=ナークが香水瓶を逆さまにしてしまったのです。
無論、瓶は開いていたので中身は地面に真っ逆さま。零れていきました。
流れる香水が撥ね、私とミス=ナークの服に撥ね、
トプトプトプトプ……コポ
空になってしまったのです。
「あなたのような方には香水なんて洒落たもの、似合わなくってよ。」
そう言ってミス=ナークは瓶を地面に叩きつけて
ガチャン!!
割ってしまったのです。
「高貴な者に高貴な物が似合うのです。
身の程を知らないのは愚かではなくって?」
そう言って割れたガラス瓶を放って出て行かれてしまったのです。
「……………そういう訳で…割ってしまったのです。
申し訳……………ありませんでした。」
罪悪感で辛そうなのが解る。
彼女は何故そんな顔をするのかね?
君が何をしたというのかね?
割る気があったのかね?
違うだろう!
君は今、悲しんだり、罪悪で潰れるべきでない。
怒るべきなのだ。
「シェリー君、安心しなさい。君は何も悪い事はしていない。
香水は又新しく作れば良い。
ガラス瓶もそこら辺に有る物を使えばいい。
何も問題は無い。私には君に対して怒る理由が無い。」
「…………申し訳有りま」「謝らなくていい。」
「…………有り難う御座います。」
「宜しい。」
そう、君に対して私は怒らない。
君に対して………な。
人の物を奪って壊す。
器物損壊や窃盗に当たる犯罪だ。
それをシェリー君に対して行うなど良い度胸をしている。
今日の私は刃を向けないと誓った。
ナクッテ嬢には刃を向けない。
しかし、私にとって刃を振るわずに人を破滅させる事は造作も無い。
相手が刃を向ければそれで事足りる。
7月末までにモリアーティーを10万字超えで賞に応募したいなぁ。と思っています。
応援(感想、評価、レビュー、アドバイス等)宜しくお願いします。
なろうラジオ大賞も大量投稿中なので読んで頂ければ幸いです。




