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未来の黒幕系悪役令嬢モリアーティーの異世界完全犯罪白書  作者: 黒銘菓
モリアーティー嬢とモリアーティー教授
38/1781

門は開かれる

 エピローグ。言わばCパートの様なものです。

 寝惚け眼で書いてしまったので、軽い気持ちでお読みください。

 ギィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!

 大きく重い音を立てて、門が開かれる。

 その先。学園の外には馬車が待っていた。

 上等な馬車だった。

 この門は、普段開かれる事は無い。

 宿舎のあるこの学園では、外部から入って来るものは極端に少ないからだ。

 しかし、門が開かれることが、極稀にある。それは、誰かが学園を去る時だ。


 ポーグレット=ホエイ=コションは今日、この学園から去る。

 理由は幾つかある。

 先ず、床を踏み抜いた一連の事件。

 これで彼女の評価は下がった。そもそも然程熱心な生徒では無かった所為で評価は更に下がった。

 そして、その件で自部屋謹慎を命令されている中、勝手な外出をした挙句、井戸で溺れ、許可を取って外出していたシェリー=モリアーティーに井戸で溺れている所を助けられた。

 反省の色が見えなかった。そして、更に、致命的な(・・・・)これが(・・・)決め手となった。

 『・本校の生徒手帳は本校の矜持と淑女の心である。

 紛失が意味するは、その者が淑女ではない事を示すものである。』

 生徒手帳を紛失したのだ。

 井戸までの道。又は井戸で無くしたと思われたが、結局、見つからなかった。


 一日で立て続けに失態に次ぐ失態。

 彼女は最早淑女では無かった。


 「お世話になりました。」

 門の前で丁寧に、ミス=フィアレディーと私に対してお辞儀をする。

 「誠に残念です。」

 「申し訳、御座いませんでした。」

 「もう……行ってしまわれるのですね。ポーグレット。」

 「えぇ…………でも、いいの。

 最後にあなたと解り合えたのだから。悔いは無いわ。」

 そう言って目に涙を浮かべながら抱擁をする。

 「お手紙…………必ず送ってね。」

 「えぇ…………そうだ!シェリー………これを。」

 豚嬢はそう言って懐からペンダントを出した。

 「これをあなたに。私とあなたの友情の証に、持っておいて。」

 緑色の、豚の紋様をあしらったペンダント。

 中々の価値のある代物だ。

 「駄目よ!そんな大切そうなもの!」

 シェリー君が断る。

 「良いの!あなたに貰って欲しいの!私の分も、しっかりと学んで!これはその為の祈り。

 あなたに託す、私の祈りよ。」

 そう言って強く、渡す。

 「解ったわ。

 あなたの思い。しっかり受け取ったわ。

 あなたこそ、お元気で。」

 貰った物を、固く握りしめていた。

 「お嬢様…………時間です。」

 馬車の前で立っていた燕尾服の男がそう言った。

 「………御機嫌よう。ミス=フィアレディー。そして、ミス=シェリー=モリアーティー。」

 「御機嫌よう。ミス。息災で。」

 「御機嫌よう。ポーグレット=ホエイ=コション。」

 豚嬢は身を翻し、馬車に乗ってこの学園を去っていった。





 「あちらは…………お友達様でしょうか?」

 馬車の中で燕尾服がコションに尋ねた。

 バシン!

 奇妙な音が響いた。燕尾服がいきなり殴られた。

 「⁉⁉」

 然程の威力は無いが、それでも混乱はしたらしく、燕尾服は目を白黒させていた。

 「馬鹿を言わないで、あんな下民なんかと!

 あぁーあ!この服ももう着れないわね。

 帰ったら、この服の始末と風呂の準備をなさい。

 豚臭くてかなわないわ。」

 本質はそう簡単に変わらない。



 「今日はもう……………疲れました。おやすみなさい。教授。」

 「あぁ、お休み。」

 シェリーが就寝し、意識を失う事を確認した後、


 スッ


 替わる。

 次の瞬間

 ガサゴソと胸をまさぐった。

 おっと、変な意味では無いからね。

 用が有るのはこれだ。そこには生徒手帳が有った。

 緊急事態で濡れてしまい、ぐちゃぐちゃになった手帳。

 手帳の表面のカバーを触っていたかと思うと、中の紙部分を取り出す。

 そして、不思議な事に、中身は2冊(・・)有った!

 「あの手の娘は絶対に反省しない。

 というか、私にわざとらしくハグをしていた段階で、既に嘘吐きが顔に出ていた。」

 という事で、シェリー君が気絶していたのを良い事に、スらせて貰った。

 確実に退学(・・・・・)に追い込む(・・・・・)ために(・・・)

 そんなこんなで今の今まで、そうしてシェリー君の手帳に挟んで隠していた。という訳だ。

 『火炎』

 手帳が炎に照らされる。魔法というのは、本当に便利だ。

 火は広がり、どんどん灰になっていく。

 「これで………証拠は無くなる。

 さてと………………」

 燃える手帳に照らされた部屋の、ある一点を見る。


 ペンダント


 「まともなものな訳が無いが……………」

 そう言って手にトンカチを手にする教授。

 カチーン!

 振り上げたトンカチをペンダントに軽く振り下ろすと………


 カチッ!


 何かの仕掛けが動いたような音がして、トンカチを退けると、そこには、内部から針が飛び出したペンダントが有った。

 「成程………毒か。」

 慎重に摘み上げ、その先端を観察する。

 これをもし、肌身離さず身に着けていたら、不意の衝撃でこれが無防備な肌に突き刺さり、取返しのつかないことになっていた。

 怪しいとは思っていたが、ここまで悪趣味だとあの時彼女を無視して石を投げ入れるべきだったとも思う。

 「まぁ、シェリー君が信じたかったんだ。仕方ない。

 生憎、信じたからと言って応えてもらえる訳ではないがね。」

 もう一振り。

 二振り

 三振り

 四振り

 五振り

 六振り……………………

 最後の最後の方、ペンダントは砕けて砂のようになっていた。


 窓を開ける。

 良い風が入って来た。

 「証拠隠滅」

 ふぅと息を吹きかけると、ペンダントの残滓と灰は風に運ばれ、月明かりに照らされて輝きながら消えていった。

 もう誰もこの犯罪を証明出来ない。


 「シェリー君、君は未だ未だだね。」

 未熟、半端な情け、甘さ、付け入る隙は幾らでも有る。

 しかし、それで良い。

 彼女が未熟が故に、私が居るのだから。

 私は彼女を教え、助け、彼女の行く末を見届けると決めた。

 窓を閉めると、再び布団をかけてシェリー君を寝かしつけた。

 夜は更けていく。

 悪夢のCパートの悪夢

 ただでさえCパートの存在が悪夢なのに、内容までもが悪夢。

 ハッピーエンドなんてある訳無いでしょう?

 人間がそう簡単に心変わりする訳は無い。

 主人公がモリアーティーで爽やかに終わる訳も無い。


 かくして、オマケの筈のエピローグには非道な最期しかありませんでした。

 因みに、第二章の構想は出来ていたり、出来ていなかったり………………

 二章と三章のバランスが取れていないので、今、構想中ですが、難儀しています。

 もし、良ければ、続編の応援。何卒宜しくお願い致します。

 感想や評価もお待ちしております。

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― 新着の感想 ―
 全話でハッピーエンド?と思ったら コション嬢はやっぱり変わらなかったんですね。
[良い点] 1話前の時点で大円団ハッピーエンドする小説かと思ってたから、最後までクズでいてくれて嬉しい。
[一言] 豚嬢はいつ頃からそのような即死トラップの ペンダントを持っていたんでしょうね。 学園を去る前に大急ぎで造らせたのかしら? まさか常々誰かに狙われていたり……?
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