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御免なさい、ゴタゴタとグダグダが合わさって10日間くらい空きました。御免なさい。
形状記憶合金。
金属は原則、力を加えて変形させた後に元の形に戻る。という性質は持っていない。
しかし、ある種の合金はその法則、性質から逃れ、元の形から変形させた後、熱を加える事で元の形に戻るものが有る。
非常に革新的な発見だろう。
眼鏡の部品として使えば、曲がってもお湯さえあれば元に戻る眼鏡が出来る。
例えば建造物の天井に水道管を張り巡らせ、その一部に形状記憶合金で栓をしておき、火災の際に熱で栓が外れる様にしておけば、あっという間に消火が出来る。(最も、この前の校舎の炎上の様な場合や金属火災の場合、逆に延焼や爆発を引き起こす場合が有るので幾らでも手は有るのだがね。)
非常に便利だ。
そして、これを利用すれば、針金製の装飾品を引き延ばして凶器として使い、火にくべて装飾品に戻す事が出来る。
装飾品を使って絞殺をするなぞ誰が思う?余程の名探偵でもない限りは考えまい?
そして、他の利用法は……そうだな………。
例えば、元々の形状が薄い帯状の鍵を変形させて、花の形をした装飾に化かして、金庫の発見を困難にする。なんて事も出来る。
『鍵はFを横にしたような形状をしている。ならば鍵穴もそれに対応した形状をしているに違いない。』なんて先入観で考えた日には鍵も鍵穴も永劫見つからない。
おまけに今回は5つの鍵のサイズが全く違っていたから更にややこしさを加速させていた。
見つけるのは本来容易ではない。鍵を火の中に放り込む間抜けなど居ないからだ。
ただ、鍵を変形させる迄は良かったが、熱で変形するのは頂けなかった。
厳密に言えば、形状記憶合金というアプローチ迄は良かったのだが、それと併せて熱線や爆発を引き起こすのは悪手であった。
形状記憶合金はその性質上、高熱が加わると当然元の形に戻ってしまう。
そんなものを熱線や爆風近くに置くのは間抜けのやる事だ。
だからこそ、熱が加わる可能性のある二ヶ所だけは断熱素材で鍵を包んだのだろう。
だからだよ、こうやって気付かれたのは。
わざわざ『ここは他と違います。』なんて宣伝したらバレるだろう?何かが違うだろうと勘ぐって調べまくるに決まっているだろう?
そして、そうやって調べて、断熱素材だと解れば加熱というキーワードに直ぐ辿り着く。
後は試しに鍵を火で炙って確かめれば良い話だ。
足の引っ張り合いは大変に結構、存分に結構だが、最低限の連携は取って欲しいものだ。
やるならせめて熱系のゴーレムを避けるか、液体金属や肉体のデータを鍵にするとか……もっと工夫は出来ないのかね?
「では、お宝探しも終盤、行きましょうか?」
先刻まで、一つとして同じで無かった花飾りが同じ形の鍵となり、その内の一つをおもむろに摘まみ上げると、4人が探し出した奇妙な穴にそれを差し込んだ。
ガチャリ
鍵を穴に差し込むと、文字通りピッタリと嵌り、地下から響く様な音と振動がし始めた。
「ぬぅ?」「にー?」「なんだナァ?」「のー?」
ゴゴゴゴと言う地響きと共に広間の中央の地面が割れ始めた。
慌てて地面に手を付き、這いつくばる様になっている4人を尻目にシェリー君は慌てる事無く割れている地面の方へと向かう。
「我々の目的地はこの先に有る様です。行きましょう。」
地震が収まると同時にシェリー君は割れた地面の中を覗き込み、そう言った。
そこには階段が有った。
コロナが更に酷くなる中、拙作が誰かの役に、暇潰しになりますように。




