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未来の黒幕系悪役令嬢モリアーティーの異世界完全犯罪白書  作者: 黒銘菓
アカデミージャック・アカデミークイーン
282/1781

宝を探そう、鍵は何処に使おう?

 シェリー君一行は、未だ意識の無い怪我人の猫背をその場に残し、比較的死にそうにない4人を引き連れ、自分達は最初の大広間に向かおうという事を提案していた。

 というのも……

 「これは、これらはおそらく、各部屋に各々使うものでは無いと、鍵穴は大広間か他の場所に有ると思います。」

 シェリー君の言葉に長身痩身が首を傾げつつ疑問を口にした。

 「根拠は何かナァ?」

 「根拠、と言う程のものは有りませんが、先ず、各部屋には確実に鍵穴は有りません。それだけは言い切れます。

 あれらの部屋は、あくまでも鍵を守る為に作られた場所。それ以外の事、つまり別の何かを設置する意図が全く無い作りでした。

 例えば、あの場に鍵穴を作るのであれば、侵入者の迎撃の余波で鍵穴が使用不能になる恐れがあります。

 鍵として、自分達が開けられることが前提である以上、仕掛けられません。」

 「ぬぅ、確かに、金庫の前に防犯目的で爆発物を仕掛ける輩は居ない。か…。」

 「その通りです。更に言えば、鍵穴とゴーレム、つまりは貴重品と侵入者の間に物理的距離が無いならば、侵入者の迎撃時に巻き添えで貴重品が傷付く可能性さえも有ります。

 いくら金庫が頑丈だろうと、その側で荒事を引き起こすことは心理的に不可能です。」

 「成る程のー、そりゃぁそうだのー。

 そんなことすれば、心配で夜も眠れなくなるのー。」

 「そもそも、鍵は鍵穴や金庫の隣に置いておく物ではありません。鍵と離れた場所に金庫、つまり鍵穴を置いておけば、鍵穴または鍵のどちらか一方が万一見つかったとしても、『鍵穴または鍵を探す』という手間が発生し、侵入者にとっては大きな障壁です。

 そして、これだけの警備が有る以上、この鍵の先に有るのは、これだけ警備を厳重にする価値が有る代物でしょう。」

 犯罪者の心理として、目撃者は恐怖以外の何物でもない。

 そして、目撃者を減らす為には『死人に口無し』という荒事手法を用いるか、そもそも犯罪に掛かる時間を減らすしか無い。

 逆に言えば、手間の掛かる犯罪はそれだけで犯罪者の足を遠ざける効果が有るという事だ。

 そして、この迷宮じみた防犯システム。これだけまどろっこしいものを造っておいて、この先に有るのが無価値な石ころ一つ……とはならない。

 「「「「つまり?」」」」

 4人がシェリー君に詰め寄らん勢いで迫る。

 「この先にはこれだけの設備を造らざるを得ない程隠し辛い質量が有る貴重品、または小さくとも相当に重要な物が有ると考えられます。」

 「「「「よし!!」」」」

 4人の息が合う。

 4人は乾きかかった血を拭い、

 「直ぐに黄金宝石を持って来るからな。待ってろなぁ!」

 「朗報を待っとるんだにー。」

 「ぬぅ、お前の敵は取る。待っておくと良い。」

 「まあ、大人しくのー。」

 意識の無い猫背の肩にそれぞれが触れる。

 安全を確認した後、重傷の猫背をその場に置いて、シェリー君を除いた4人は大広間に勇んで意気揚々。歩を進めていった。


 もう完全に盗賊団のボスと化したシェリー嬢。

 半年するかしないかの合間に一体何があった⁉

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