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未来の黒幕系悪役令嬢モリアーティーの異世界完全犯罪白書  作者: 黒銘菓
モリアーティー嬢とモリアーティー教授
26/1781

助け船の行先

 ミス=フィアレディーは部屋に入るなり、そこら中を捜索し始めた。

 その手際は教師のソレより猟犬や鷹のソレだ。

 しかし、その手際と眼光に似合わず、その行動全てが優雅で気品に溢れていた。

 「成程、特に床に濡れた様な跡は有りませんね。」

 ベッドの下まで見て確認をしたミス=フィアレディーはそう言って部屋から出て行った。

 「ミス=コション。

 部屋を一通り探しましたがそれらしき跡は有りませんでしたよ。」

 相変わらず上半身だけの豚嬢を睨みつける。

 睨まれた豚嬢は予想外の反応に顔が蒼白になった。

 「そ、そんな!

 ミス=フィアレディー!もう一度、もう一度しっかりと見て下さい!

 きっとある筈です!

 その女がやった!」


 ピシッ


 「何か?

 私は怒っています。

 言い訳は聞きたくないのですが?」

 眼光がより鋭く、険しくなる。

 「…………では、では私の部屋を!

 私の部屋に行けば動かぬ証拠が有ります!

 私の部屋に……確かに水が垂れて来たんです‼」

 必死な豚嬢の顔が見苦しく、往生際が悪く、面白い!

 シェリー君の部屋に何も無かったんだ。


 君の部屋に何かを残す訳があるまい?


 「………………何も、有りませんでしたよ。」

 下の階へ行き、部屋を一通り探して来たミス=フィアレディーはそう言った。

 絶望に染まる豚嬢。

 私も着いて行ったが、笑いそうになった。

 想像して見給え!

 豚嬢の下半身が天井から生えているんだぞ!

 笑い死にしそうなのを必死にポーカーフェイスで通したんだ!ハハハハハハハ!!!!!!!


 頭の中でシェリー君がドン引いているのが解る。


 天井は綺麗なモノ。

 部屋に散らばったクッキーを見てミス=フィアレディーは大激怒!

 そして天井から下半身!

 嗤わずに如何しろというんだ⁉

 「これで、はっきりしました。

 ミス=コション。

 貴女には追って処分を下します。

 それまでの間は自部屋謹慎。

 反省していなさい。」

 静かに、沈むような、それでいて燃える様な怒りを上半身に突き刺しながら彼女は去って行った。

 「そんな…………ミス………あの、もう一度……もう一度!」

 上半身がミスを引き留めようと手を伸ばすが、物理的にも言動的にも届かず、無様すぎる醜態をさらした豚嬢だけが廊下に残った。

 私が、ワザワザ相手の無実を証明するためにそんな真似する訳が無い!

 「ミス=コション。お手をお貸ししましょうか?」

 上半身だけの豚嬢に手を差し伸べる。


 ペチン


 湿気た音がした。

 豚嬢が差し伸べられた私の手を払い除け、というか撥ね退けようとした。

 避けたお陰で手に痕は残らなかった。

 「馬鹿にするんじゃないわよ!豚!

 貴女に誰が助けを求めるもんですか!!

 失せなさい豚!」

 あぁあ。悪手とはこの事だ。

 「………解りました。それでは。」

 恭しくお辞儀をしてミス=フィアレディーを追いかけた。

 「ミス=フィアレディー。宜しいですか?」

 階段の踊り場に彼女は居た。

 「…ミス=モリアーティー。手間を取らせましたね。

 もう、自室にお戻りなさい。

 安心しなさい。あなたは処罰の対象にはなりませんから。」

 鋭いが、先程よりは恐ろしさは無い。

 「はい。有り難う御座います。

 あの……………………………………」


 この後、話している途中で豚嬢が一人で床から抜け出そうとして下の階に落ちた。

 踊り場で、その様子が目の前で繰り広げられたため、笑いそうになったのは言うまでもない。

 落ちると(・・・・)解っていても(・・・・・・)、笑いは止められないな。

ミス=フィアレディー。


最初は「どんな名前にしようか?」と考えて、思いつかず、「彼女のイメージ『Fear(恐怖)』+『Lady(淑女)』でフィアレディーにしよう。」と相成りました。




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