後始末、探し者
それからはひたすら地味な作業だ。
ヒビ割れても未だ辛うじて動く石塊のヒビに、剣や棍、それに斧といったものを差し込み、てこの原理でヒビを広げていく。
剣が折れない様に、棍が折れない様に慎重に砕き割っていく。
斧の刃を噛ませて上から踏みつけ、砕いていく。
素手でヒビの入った脆い部分を破壊していく。
杖から出る火で炙り、その後直ぐに水を掛けて急速冷却による温度差で破壊していた。
シェリー君は少し離れた場所で温存の為に休憩がてら広間の壁や地面、それにゴーレムを観察していた。
特に何の変哲も無い石の壁と石畳それにゴーレムに見えるだろう。
「先程まで、見る余裕が有りませんでしたが、この材料……………」
「材料がどうかしたかね?」
「いえ………………この石、カレシム石なのです。」
カレシム石。この国の西方の海沿いに広がる地域原産の石材。
強度はそこそこ高い上、重量もそこそこ。大量に採掘出来る為に安価。非常に使い易い材質である。
しかも、性質の悪い事に、割れやすい方向や加工が困難で有る訳でも無い。重量もそこそこレベルである為に運搬難易度も高くない。
要は相手にする側としては、『非常に面倒この上ない。』という事だ。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………………………………………ゴゴゴゴゴゴ………………………ゴゴ……………………………バキャン!
抵抗していた音が止んだ。シェリー君が観察している内に、蜘蛛の巣に絡め取られた憐れな巨人は、招かれざる客5人に身動きが取れないままバラバラに解体されてしまった。
「こっちは終わったにー。」
「ねぇねぇねぇ、ここの、ゴーレムの胴体の真ん中になんか鍵みたいなのが有ったんだけど。どうすれば良い?」
そういって手に持って掲げたのは金色の鍵。
ここにも矢張りあったか。
「一応、私に預けて頂けますか?」
「良いよぉ。」
そう言って金の鍵がシェリー君の元へと飛んで来た。
チャリン!
シェリー君は鍵を掴みとった。
◇
教室を虱潰しにレンと共に探す。
一階二階と教室を机まで引っ繰り返して徹底的に探してみたものの、気配一つ無い。
気配を消している云々とかでは無く、形跡が無い。
「一体何処に行ったんスかね?」
頭を掻きながらレンが辺りを見回す。
「さぁな。ただ、この学園の中から出てねぇって事は確実だな。
この辺一体には御貴族様の兵隊サマが警備をしてるし、隠れる場所は無い。そもそも、柵を下手によじ登ろうとすれば警備システムに引っ掛かる。
どう考えたってこの中に居る。」
「流石ジャリスさん!」
「馬鹿やってねーでさっさと探せ。」
確かに、この校舎内に居るのは確かだ。
そして、校舎内には気配が一つも無い。
おかしい事この上無い。
「ま、面倒だが………やるしかねぇか……………………。」




