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未来の黒幕系悪役令嬢モリアーティーの異世界完全犯罪白書  作者: 黒銘菓
アカデミージャック・アカデミークイーン
219/1781

最短の終わり方

 頃合いだ。


 フッ


 シェリー君の体を借りる。

 「教授⁉一体何を?」

 シェリー君が困惑しているのが解る。

 「時間の無駄だ。ここでこのまま葬式ムードに浸るのもシェリー君の悪影響である事だし、この立て籠もり事件を速やかに片付けさせて貰う。

 さぁ、解決編だ。」

 ソファに沈んでいる痩身痩身の後ろに立つ。

 『強度強化』

 体の一点のみを強化する。

 その一点とは、肘。

 肘の強度を一瞬、限界まで強化して肘を長身痩身の頭に振り下ろし、全体重をそこに叩き込む。

 ガチン!

 鈍器で殴った音がして長身痩身が前のめりに倒れてテーブルに突っ伏す。

 葬式ムードに浸っていた他の連中がそれを見てギョッとした。

 「ぬぅ…………貴様………何を!」

 「ねぇ……何を⁉」

 「矢張りこうなったかのー………」

 「………何をするのかにー⁉」

 ソファから立ち上がり、各々武器を持って敵意を向ける。

 4VS1で、相手は知略に秀でているとは言っても小娘。自分達は武器を持っている。


 『確実に勝てる。』とでも思っているらしい。

 「笑わせないで下さいよ?」

 「ねぇねぇ……死んじゃえ!」

 猫背の男が杖をこちらに向けて構える。

 先程の様なこけおどしでは無いだろう、殺意の目をこちらに向ける。

 しかし、ここは室内、しかも6人の人間と家具が所狭しと詰め込まれた空間で飛び道具の利点はほぼ無い。

 そして、こちらが何を持っていたかをちゃんと覚えておくべきだ。

 「残念ですが、無駄です。」

 袖口から石を投げる。先程狙撃手からこの男達を守る為にシェリー君が使ったアレだ。

 当然、それには糸が付いていて、投げつけた糸は相手の杖を絡め取る。

 「え?」

 糸は細く、最小限の動きで投擲したが故に猫背には何も見えていない。

 「寝ていなさい。」「ゲフえ………」

 掌底を叩き込み、二人目を片付ける。

 

「ヌゥ…………貴様!」

 棍を両手に握りしめた中肉中背が怒りを露わにこちらに突きを放つ。

 しかし、天井の低い室内で、しかも人の密集した場所では長物は思い切り振り回せず、突きに頼らざるを得ない。戦略が偏れば、私の前では文字通り致命的。

 しかも止めに、

 「この程度の技量で有れば、手元の動きで何処を狙っているのか容易く解ります。」

 突きを躱しつつ中肉中背に近付き、先端を右手で掴んで持ち上げつつ、中肉中背の手元の棍を左手で強く下に押しこみ、丁度回転するようにして中肉中背の顔に自分の棍が直撃する。


 バキ!


 「ガフ………ゥ」

 鼻血を出しながら気を失って前のめりに倒れる。



 残り二人。

 筋肉質は斧を、小柄な肥満は素手でこちらに挑みかかって来る。

 小柄な肥満がこちらに拳を突き出す。が、

 「その程度の体術で私を如何にか出来るとでも?

 見ていましたか?先程までの三人を相手にしていた私を。」

 拳は空を切る。

 隙だらけな体勢の小柄の脳天に拳を叩き込もうとして、


 「ニィッ!」


 斧が横に振り抜かれる。

 身長差を利用して同士討ちにならない様に考えられているが、

「その程度、お粗末すぎて戦略とも呼べません。」

 迫る斧に片手を載せ、そこに全体重を掛けて斧の上を飛び越える。

 「!」

 だけでなく、飛び越えた勢いをそのままに斧で両手が塞がって隙だらけな筋肉質の頭に回し蹴りを叩き込む。

 「か………」

 残る一人、筋肉質への蹴りの一連の動作を終えて着地した直後に後ろから拳が幾つも飛んでくる。

 「ノォォォォォォォ!」

 敢えて反撃しない。

 敢えて後ろを向かない。

 背を向けたまま幾つもの拳を躱して見せる。

 「このぉぉぉぉぉぉぉ!」

 ムキになっても冷静さを欠いて余計当たら無くなるだけ。意味が無い。

 後ろから伸びて来た空を殴る拳を掴み、そのまま地面に投げ落とす。


 バキリ!


 「………………」

 テーブルに頭から突っ込まされた小柄な肥満が沈黙する。


 部屋が、静かになった。

 「さぁ、では、白旗を振ろうか?」

 懐から白いハンカチを取り出した。




 モリアーティー格闘術が火を吹きましたね。

 地味に教授のコレを書くのが意外と難しい&特に楽しい瞬間なのです。

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