黒
「露骨にクロだな。怪しいどころか確信が持てる。」
「露骨に黒ですね。この人達、そのドワーフみたいな方に陥れられています。」
シェリー君と私の意見は完全に一致した。
突発的にトラブルに巻き込まれて、借金を押し付けられ、どうにもならずに途方に暮れていた所に胡散臭い輩からの誘い。お宝の根拠も無ければ、『何故そんな事を知っているのか?』『知っているなら何故お前はそれを取りに行かないのか?』…………という指摘する要素満点で、怪しさ限界突破のお宝話。
ここ迄露骨だと馬鹿にしている気もするな……………。
「ガセかも………否、ガセだって解ってはいたんだがナァ……。」
長身痩身がそう言うと他の4人も項垂れる。
「悪質ですね………」
シェリー君が呟く。
確かに、判断力を奪われた状態では他に為す術は有るまい。
私とて、判断力が無い状態ならばそこらの有象無象に騙されるとも。
まぁ、判断力を如何にして奪えるかが最大の問題だがね。
「で、結局、その宝は今までの探索では見つからなかった……と?」
無言で肯定する5人。成程、今の今まで見つからなかったと……………。
「ぬぅ………………万策尽きたか。」
「もう…………外へ探しに行く方法も無いしのー…………」
「もう…………諦めて外に出るしか無いのかにー…………」
「ねぇねぇねぇ………もう、駄目なのかな……………」
「あぁ………騙されて、こんなバカな真似して………因果なもんだナァ……………」
学長室があっという間に葬式ムードへと変わっていく。
廊下には腕の良い狙撃手。扉から顔を出した途端に頭はウィリアムテルの林檎よろしく貫かれる。
校庭側にも貴族から派遣された騎士が多数。強行突破出来る様な手段はこの男達には無い。即刻囲まれてチェックメイト。
たとえその両者の目を盗んでみた所で、この男達には逃走手段は無い。
この近辺に逃走手段を隠せるような場所は無いし、この男達にそれを確保する資金は無い。
更に言えば、この辺りは何度も言う通り、何も無い。
この敷地から出ても隠れる場所は無い。逃げたら即刻バレてお縄だ。
そして、捕まったら最後、この男達は貴族の恨みや反感を大いに買ってしまった。
後ろ盾のないこの男達は確実に極刑。つまりは処刑される。
「………………………………」
シェリー君が思い詰めた顔で考えている。
今まで私が考えた、幾つかのこの男達の未来、DEAD ENDなので未来は無いが、終わり方に思いを馳せて、そして、必要無い罪悪感や苦悩に打ちのめされようとしていた?




