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ここからが決闘の醍醐味


 《一方、解説席》

 「魔法戦になったな。」

 「殴る蹴るだけなら、武器を持ち出す必要は無い。貴人は魔法も強いからな。使うのも道理だ。」

 「左様。決闘制度が出来た理由には諸説あるが、とある貴人が商売敵の貴人の屋敷に魔法を撃ち込んだという事件があってから、という話は有名だ。」

 「物騒なことをする貴人もいたもんだ。だが、物騒な火力だな。熱がここまで届いてる。」

 舞台の上が輝き、真っ赤に染まる。解説席や観客席へ直接の被害は無いが、その熱は肌を焼く夏の陽射しの様だ。

 「何を、しようとしている?」

 「折角の火力だ、使わないと勿体無いだろ?」

 リバルツ家当主の視線の先を見る。

 串に刺さった巨大なベーコンがコックの手に握られていた。

 「臨場感は必要だが、この熱量は観客には強過ぎる。ヤヤーナめ、対策が甘いな。」

 目の前に手を伸ばし、何かを掴む様な動作をする。同時に熱波と光が弱まった。

 「流石だな。」

 賞賛の言葉、だが少し残念そうなコック。それに対して当主は言う。

 「焼き加減は、それで良いか?」

 いつの間にかコックの手のベーコンが焼き上がっていた、絶妙な焼き具合で。

 「おぉ、最高だ。」

 焼き上がりを見てご満悦なコック。

 そして、懐から取り出したサバイバル用のナイフで串をベーコンごと真っ二つに切って片割れを当主に渡した。

 「何のつもりだ?」

 「冷めない内にと思ってな、嫌いか?」

 「……頂こう。」

 「他にも幾つか持ってきてある、欲しければ自分で炙るといい。」

 ジャーキー、チーズ、ベーコン、卵、ナッツ……解説席がスモークの香りに包まれていく。

 「……そこの老骨執事、この私とここのコックにパンとサニーレタス、そしてトマトを。」

 「はは、畏まりました。」

 神経質そうな名家の当主と屈強で眼光鋭いコックという、何とも言い難い組み合わせ、何とも言い難い空気感ではあるが、楽しい宴が始まった。

 「さて、坊は大丈夫か?」

 「これで終わる様なら、あのボンクラ当主の倅もそこまでということだ。」

 「随分と高く買ってるんだな。」

 「…………フン。」

 閃光と熱が収まる。

 舞台の様子が観客にも明かされた。



 火は便利で、そして脅威である。

 それは魔法世界でも変わらない。

 だからこそ、火の魔法は強力で、だからこそ対策も進んでいる。

 その中でも特にこの魔法は対策方法として高い評価をされている。

 その理由は他の魔法の対策も兼ねているから。



 熱気と閃光が迫る。未だ火が来ていないにもかかわらず、肌を焼く。

 けれどモンテル=ゴードンは慌てない。

 こんなデカいだけの魔法、怖くもなんともない。

 メリケンサックを装着したまま、地面に拳を置く。

 『地形操作』

 イメージするのは土を固めた曲線を描く壁。更にそれの表面を水分の多い泥で覆う。

 固めただけの土では突破される。だからその表面を水分で覆う。

 真正面から受け止める必要は無い。だから炎は曲線をなぞり、上へ。

 泥の水分が奪われていく。だが壁の向こうに立つモンテルに炎は届かない。

 轟音が響く、だがそれだけだ、壁を炙り、閃光と熱が収まった舞台上に水蒸気を発生させ、真っ白に舞台を覆い隠す。

 (仕留められていない。)

 シソーデはそう確信していた。

 今までこの熱量を前に臆さなかった者はいなかった。

 だが、魔法を放つ前の卑劣漢の目には恐怖は無かった。

 まるで、こんなものは脅威でも何でもないと言いたげな、これ以上をよく知っていると言いたげな目をしていた。

 だから、警戒する。

 真っ白な世界に目を凝らし、次の一手を警戒する。


 だから気付けた。


 白い世界の向こうにある黒い影に。

 「もらった!」

 『身体強化』+『強度強化』

 全力で長剣を振り下ろし、それを半分まで叩き切れた。


 だから気付いた。


 叩き切った手応えが人間のそれではなく、人の形を模した泥の塊であるということに。

 「こっちだよ!」

 『身体強化』+『強度強化』

 メリケンサックが背中を直撃した。


 リアクションありがとうございます。

 リバルツ家の人、一人称が『このボク』・『この私』といういかにも高圧的そうな口調と尊大な態度のクセにそうでもない。なんなら息子はメイドの尻に敷かれているという……。

 こんなキャラ、データ(プロット)には無いぞ!もう『ヤな奴ライバル』は無理がある!

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