お開き前の主人公
評価とリアクション、ありがとうございます。リアクション、もしかして、物凄く増えてます?
本日10時より、なろうラジオ大賞開始です。参加するので、応援よろしくお願いします。
「何があったかは知らないしどうでもいいが、双方、一度矛を収めてもらおう。
ここはリバルツ家の邸宅で、今はお茶会の最中で、このボクがその茶会の主人だ。
従ってもらおう。」
執事に追いつく形で茶会の主人、ヤヤーナ=リバルツがやって来る。
「リバルツ家は私闘に口を挟むのかね?」
シソーデが少しだけ整った眉を斜めにして問いかける。
「改めて言おう。他所でやるなら君らの闘いなんてどうでもいい。
だがここで闘って、我が家の使用人達が懸命に整えた庭を荒らし、準備してきた素敵な茶会を無粋な血で汚すというのなら、それは君達がリバルツ家を浅慮な行いで虚仮にしたということになる。
それでも良いなら、続けてもらおう。
無論、そうするならこちらも領主の代理として秩序を守るために動かせてもらうがね。」
割って入った執事に目をやり、そう答える。
執事は主に答えるように微笑み、静かに主人に付き従っていたメイドはどこからか巨大なメイスを取り出す。
『決してやらせはしない』という意味である。
「おい、退けよ。邪魔するな!」
「モンテル=ゴードン、君もだ。
これ以上、我が家の秩序を乱し、他のお客様の邪魔をするというなら、容赦しない。」
血走ったモンテルの目に怯む事無く、睨み返す。
「君単独で何かをしでかすなら不思議じゃないが、相手がいて、その相手も血気盛んなら、何かよほどの理由があるのだろう。
リバルツ家の敷地内で起こったことなら、私が責任を取らなければならないかもしれない。
双方、順番に話してほしい。無論、相手の発言が虚偽だと思っても決して話を遮らない様に。
双方、約束してもらえるかな?」
「……異論は無い。」
「……解ったよ。」
説明が終わり……
「成程。自分の従者・妹を侮辱され、直接的に害された。だから決闘に至った……ということか。」
「その通りだ。」
「そうだ。」
「そこには食い違いが無いのか……。
そうだな、双方の望みは、『謝罪』で良いのかな?」
「そうだ。」
「しっかり全員に謝って貰うぞ!」
「……はぁ、双方『決闘』を宣言し、退く気は無いと。
解った。なら、ヤヤーナ=リバルツが審判となり、『決闘』を認めよう。」
双方が臨戦態勢に入る。
「ただし!今じゃない。」
それを止める。
「滅茶苦茶になった茶会の片付けをさせて、そのまま『決闘』の準備をさせるなんて、使用人達に対して酷い仕打ちだ。それはこのボクのやることじゃない。
だから、こうする。」
周囲で様子を伺っていた人々をぐるりと見回し、手を叩く。
「諸君!聞いて欲しい!
先ず、楽しい茶会を台無しにしてしまい、誠に申し訳ない。
ヤヤーナ=リバルツ、この茶会の主人として謝罪する。」
執事、メイド共に謝意を示す。視線が向けられる。
「こうなってしまった以上、今日の茶会はもうお開きにさせてもらいたい。
だが、皆を満足させないまま、後味の悪いお茶会として終わらせるのはリバルツ家としては許容し難い。」
響き渡る声が耳に届き、招かれた客人の注目が茶会の主人に向かう。
「そこで、だ。後日改めて、招待状を送りたいと思う。是非参加してほしい。
ただ、普通の茶会で償いというのでは釣り合わない。
だから、今回茶会を台無しにした二人にも協力してもらい、少し趣向の変わった茶会を開催したいと思う。」
皆が惹かれている。期待でざわつく。
例外として『協力』を取り付けられた覚えのない二人だけが困惑の表情を浮かべる。
「茶会の参加者にはここにいる二人、シソーデ=ダイエイトとモンテル=ゴードンの『決闘』の見届け人となってもらう!」
剣・魔法・権力で常日頃争いを繰り広げている貴族の青い血が騒ぐ。
「次に行われる茶会は一騎討ちを見届けながら優雅に茶会を楽しむ『決闘茶会』だ!」
ヤヤーナ=リバルツは今やお開き寸前の茶会の主人公。
他を掻き消すほどの拍手喝采の中心にいた。
決闘なんてあったかな?
シソーデなんていたかな?
リバルツ君、君、どこ行くの?
(『私はまたプロットを破壊しました』というプラカードを首にかけた作者の心情より)
次回より、『決闘茶会編』開幕です。
ちなみに、ダイエイト家の名前の由来は。
カヨウ=ダイエイト:華美→華羊大八。華美の漢字を分解し、華羊大にするところでうっかり八を追加しました。
シソーデ=ダイエイト:ダイエイトは固定。『派手』という単語を分解し、『シ爪手』。




