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ようこそ、リバルツ家主催のお茶会へ

 残念だが、バスシーンはカットだ。

 紳士淑女諸君は、何があったかを推測し、思考を巡らせて部屋で待つといい。


 着替えを終え、執事の淹れた甘いホットミルクを飲みながら二人の話は始まった。


 今日、クソガキ達が向かったのはリバルツ家の邸宅だった。

 現ゴードン家当主と現リバルツ家の当主は幼少から交流があったという話で、これまでクソガキも何度か顔を合わせたことがあったという。

 そして、向こうの当主にも子どもがいて、丁度クソガキと同い年だという。

 今回呼ばれたのもそういう背景あってのこと……という話だ。

 「ヤヤーナは昔っから嫌いだった!

 何かある度にこっちと張り合って、『このボクの方が勉強が出来る』とか、『このボクの方が足が早い』とか、『このボクの方が背が大きい』とか、『魔法が出来る』とか『剣以外に使いこなせる武器が多い』とか『木登りが上手い』とか『水切り回数が多い』とか『沢山食べられる』とか……会う(たび)会う(たび)言ってくるんだ!

 だからその度に勝負して、負かしてるんだ!」

 なるほど。つまり、こっちのクソガキも向こうのクソガキも、両方とも立(ドングリ)派なクソガキ《の背比べ》というわけだ。

 ちなみに、オドメイドが向こうのメイドと共に勝負の見届け人をしており、その勝率は基本五分五分という証言があがっている。

 まぁ、そんなこんなで、最初っからそれなりに面倒が起きることは解っていたわけだ。

 とはいえ、以前からそういった競争は行われ、双方のメイドが判断して……という試合は成立していたのだから、そうそう問題にはなっていなかった。

 それが今回、執事が顔色を変え、オドメイドが泣き出し、クソガキが火を吹く勢いで『決闘』なんて物騒な単語に至ったのには、理由があった……。



 《リバルツ家の屋敷》

 黒を基調とした屋敷で、華やかさは無いが機能美と居住の快適さに重きを置いた『家』である。


 「これはこれは、ようこそモンテル様、カテナ様。おひさしゅうございます。生きている内にお二人に又お目にかかれて良かった。」

 磨かれたシルバーの丸眼鏡、整った白髪

に白髭、それと対照的に真っ黒なタキシードを着こなした老紳士がモンテル様と私に挨拶をしてくれた。

 彼はこの家の『内』を取り仕切る責任者であり、もてなしの達人にして大先輩。本来は私から挨拶をすべきだが、今日は違う。

 「ひさしぶり、ヤーンさん。」

 「おひさしぶりですヤーンさm…さん。」

 あまりへりくだってはいけない。あくまで今日はゲスト、もてなされる側。

 「はは、モンテル様はいつにもまして紳士ぶりが上がっているご様子。ショーマス様が若返ったのかと見紛うばかりですな。」

 穏やかに笑う。

 「ふーん、父上に似てる、のか。」

 「えぇ、それはもう。恐れを知らぬ精悍な目など、そっくりです。」

 「そうか、そうですか……ありがとう、ヤーンさん。」

 「ふふ、カテナ様も今日は一段とお美しいですな。一瞬どこかのお嬢様かと思いました。」

 「いえ、そのような……」

 「そうだろう。カテナは可愛いんだ。」

 「そんな……」

 モンテル様より一歩退いておいてよかった。そうでなければこんな顔、見せるわけにはいかない。

 「はは、ではお二人とも、こちらへどうぞ。ヤヤーナ坊ちゃんは今日を楽しみにしていましたよ。」

 笑顔で振り返る老紳士。それに対してモンテル様は、それはそれは、熱が出て苦い薬を飲んだ時の様な顔をしていました。

 「そう、か。それは、コウエイダナ。」

 頑張ってください、モンテル様。


 リバルツ家執事、ジー=ヤーンさん。御年何歳かは不明ですが、先代当主からリバルツ家に仕えているベテランいぶし銀の執事です。

 趣味はシルバーの食器磨き。陽光に輝く食器を見るのが何より好きなのだとか……ナイスシルバー。

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