お茶会の予想外の終わり、そして予想外の始まり
執事の発言とただならぬ雰囲気に厭な予感を感じて早歩きで行く。
目的地は屋敷の入り口。
予定では未だ茶会にいるはずのクソガキが、ボロボロになって不機嫌な顔で立っていた。
そして、一歩退く形でオドメイドがいた。
赤いシミを作ったドレスに身を包み、両手を前で組み、固く握り締めて目を真っ赤に腫らしていた。
そして、その首には首飾りが無かった。
「何があったんですか!?」
怪我自体はわんぱく坊主の範囲内。だが、執事のただならぬ雰囲気からしてロクでもないことが起きているのは確定だ。
「モリアーティー先生、大変、申し訳ありません!」
こちらを見つけるや否や跪いて頭を下げ、握り締めていた両手を差し出す。
その中にはバラバラになった首飾りがあった。
「折角お借りしたというのに、私は、私はなんてことを…………申し訳ありません!」
堰を切ったように泣き始める。手が震えていた。
「あぁ、カテナさん、怪我はありませんか?
先ず、どこかに座りましょう。
大丈夫、大丈夫です。これは元は拾ったただの石です。すぐ直せます。石の数も足りています。
糸が切れるくらいならよくあること、それは承知の上で貸し出しました。
大丈夫、大丈夫です。」
そのまま床に崩れ落ちそうなオドメイドの肩を抱き、執事が持ってきた椅子に座らせる。
過呼吸寸前。
石を受け取り急いで懐にしまい、冷たくなった手を取り、背中を擦る。
シェリー君は全貌までは見透かしていないが、バラバラになった石を見て、それを渡したオドメイドを見て、厭な予感が的中したと悟った。
オドメイドに渡した首飾りは石表面を宝石の層で細工してそれなりの装飾に見せかけたイミテーション。
宝石の姿を貼り付けたそれは、衝撃で割れると中の石が露見する代物だ。
石が5つ、割れていた。
首飾りの石は衝撃で割れる。だが、ちょっとやそっと落とした程度で割れるほど粗悪にはしていない。
叩きつけるか、砕こうとするか、あるいは踏み潰そうとでもしない限り、割れはしない。
オドメイドの手にアザが出来ていた。丁度、人の足の幅ほどの大きさの、だ。
そして、手の平は宝石層で傷付いていた。
「一体、何があったのですか?」
執事の質問に答えることなく、クソガキは不機嫌と怒りを露にしたまま、こちらに向かってくる。
「おい……」
今まで無言だったクソガキが口を開く。
「決闘の仕方を教えてくれ。」
厭な予感は見事的中した。
「決闘…………?」
しかも、やたら面倒な形で、だ。
「先ずは二人とも、着替えましょう。
バトラーさん、恐縮ですがお風呂の準備をお願いします。
一体何があったかは、後で教えてください。
答えはそれを終えてからです。」
クソガキのその態度を見て少し厳しい目をしながら、シェリー君はそう言った。
リアクションいただきました。ありがとうございます。




