大魔改造、惨劇的ビフォーアフター
まあなんということでしょう。
退屈なマナー講座とドレス作製の日々を説明するのは……いや、止めておこう。
ひたすらお茶会とダンスの訓練、それに裁縫を続けただけ。シェリー君が淑女になりきった姿しか見られない。
詳細はまたの機会に、ということにしておこう。
兎に角、退屈で大変で何の変哲も無い日々が続いたんだ。
朝昼はマナー講師、夜は仕立て屋の真似事。そんな生活が一週間だ。
その甲斐あってオドメイドとついでにクソガキをまとめてマナー教育。付け焼刃ではあるが一応の紳士淑女になった。
さぁ、それだけのことをしたら、本来疲労困憊するものだが……
「さぁ、お二人とも、準備はよろしいですか?」
疑似フィアレディー状態のシェリー君は未だに抜けきっていない。お陰でいつにもまして姿勢が良い。そして揺らがない自信がある。普段もこれくらいなら良いのだがね。
「サー!」
クソガキが硬直してそれだけ言って、直立して黙る。仕上がっている。
「はい、貴方の言うままに。私は抵抗いたしません、口答えも致しません。命令通り動きます。」
オドメイドはよく見ると小刻みに震えている。目が虚ろで呼吸が浅いのは放っておこう。
さぁ、この愉快な状況に似合う言葉を敢えて口にしよう。
「『人はいつだって変えようと思えば変えられるんだ。』」
薄っぺらで軽くて、ある意味真理だ。
「『変わろうと思えば変われる』です、教授!」
ハッとなってシェリー君が戻ってくる。
「いやぁ、『変えよう』と手を加えれば幾らでも変えられる。
心優しき花畑で踊る乙女を、死体の道の上で踊る毒婦に変えることが出来る。
人を守ることを主命としていた騎士を、殺戮に狂った狂戦士に変えることが出来る。
堕落と怠惰を貪る醜い豚を、目的のために駆り立てられて猪突猛進するように変えることも出来る。
生意気なクソガキをハイかウィかイエスしか言わない駒に出来る。
オドオドしているメイドを震えて命じた事を延々反芻する奴隷にすることも出来る。
少女を厳格な淑女の様に振舞わせることだって出来る。
おはようシェリー君。気分はどうかね?」
「………………私はなんてことをしていたのでしょう……」
「いやぁ、中々の完成度だったよ。
あまりの完成度故にコックがお茶を運んできた時に一瞬誰だか解らずお辞儀をしたあれは……クク、クハハ、ハッハハハハハハハハハハハハ!」
「私がやってしまった事なので強くは言えませんが、止めてください。
いえ、それよりも!」
目の前で呆けた二人の肩を優しく小刻みに叩く。
「お二人とも、しっかりして下さい!」
「サー!」
「しっかりします、わかりました、私はあなたの言うままに。」
「どうしましょう……」
「いっそのことこのまま出せば面白いのではないかね?」
「止めて下さい!」
いいね、ブックマークありがとうございます。
一週間のマナー講座はコミカライズかアニメで語られることを期待しておいて下さい。




