再確認の時は『もう一度お願いします。』ということにします、必ず。
「ねぇ、『お茶会』って知ってる?」
「『お茶会』ですか?一応、作法や歴史などは学園で一通り習っていますよ。」
魔法の練習が一通り終わり、早めに切り上げようとなった時、クソガキがそう聞いてきた。
「今度、リバルツって奴の家でお茶会があるんだ。
ボクと同じくらいの奴らを集めて、お茶を飲んで、お菓子を食べて、社交パーティーごっこをするんだ。」
「なるほど、一種の練習、ということですね。」
「多分そう。ダンスとかも少し踊るらしい。」
『練習』という名目で他の家の連中を招いての情報収集、あるいはコネ作り、か。
まったく、情報一つを得るのにあまりにも無駄が多過ぎる。
金ではなく頭や足を上手く使えばもっと簡単に合理的に得られるというのに。
「ホラ!ルート変更だよ!」
「落石で潰れてやしたね。」
「今の場所もメモしたよぉ。結構この辺の道はガタが来てるよぉ。」
「じゃぁ、配達が終わったら最寄りの紹介に寄って情報共有するよ!」
「にしても、最初は金が勿体ないと思ってやしたが、情報共有した地図ってのは便利でさぁ。」
「あの子が考案して、凄腕商人のイタバッサさんが主導でやったんだから、間違いないよぉ。」
「なんかこの前来た発明家先生が今色々とその辺作ってるみたいだから、直にもっと便利になるんじゃないかい?」
モラン商会の支店はそれぞれの管轄地域の情報を集め、定期的に情報を本店に送っている。
それを本店で集計、統合し、最適ルートの算出や商品の流通管理などに使っている。
また、道などが塞がっている場合は一時的にルート変更を指示し、復旧にも尽力する。
お陰でモラン商会の評判は市民からも、そして同業者からも高い。
「これが終わったら多分その足で橋の材料を取りに行くよ!」
「了解でさぁ。」
「わかったよぉ。」
馬車を走らせ足で稼ぐ。
稼いだものを頭が受け取り、より効率的に稼ぎ、還元する。
互いの長所を生かし、より合理的に回す。それがモラン商会だ。
「その……お茶会がどうしたのでしょう?」
「お茶会には従者を一人連れていくことになったんだ。それで、カテナを連れてこうと思ったんだ。」
おっと、面倒なことになることが確定した。
「良いじゃありませんか。」
シェリー君は同意を取り付けたこと前提で呑気に話している。あのメイドがそんなことを快諾する訳がない。
それは本人の立場や自尊心故というものもあるが、もう、大きな一つ問題がある。
「だから、カテナの衣装を作るのと、お茶会の作法を教えるのを手伝ってほしいんだ。」
「はい?」
疑問符付きだ。了承の返事ではない。再度確認を要求するそれだ。
「じゃぁ、呼んでくるね。」
だがクソガキは了承として受け取った。『身体強化』まで使って走って消えていく。
「え?あ、え?……待ってください!」
反応が一手遅れた。そして手遅れだ。
「シェリー君、ガラスの靴とカボチャの馬車の用意、是非頑張りたまえ。」
「え、え、え、え?」
困惑するシェリー君。
これに関してはクソガキが首謀者だがシェリー君にも問題がある。
さぁ、楽しい楽しいお茶会準備の始まりだ。
個人的にお茶会最大の難所は『熱いお茶』だと思っています。最近克服気味ですが、少々猫舌なもので。
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