学ぶ喜びにて、そして学ぶ痛みへ
イメージする。
『花や草や木を支える土』
根を張っている、小石が散らばっている、岩が埋まっている、砂が混じっている、潜む虫が蠢いている、モグラだっているかもしれない、昔埋めた宝箱がまだ残っているかもしれない。
それを捏ねて、望む形にする。
今までイメージしていたのは粘土の塊。そうじゃない。今から扱うのは『土』。
自分達が踏みしめるもので、植物の宿る場所で、色々なものが埋まった『土』。
それを、壁に、変える。
『地形操作』
土が隆起する。その中には虫がいて、石が埋まっていて、草木の根が張り巡らされていて……しかしそれらがあってなお、魔法は揺らがない。
表面に凹凸はない、穴も無い。それが立ち上がり……
「出来た。」
場所は木の根と石ころが埋まった、今までとは違い、劣悪な環境。
そこに生えてきた壁は、その環境を受け入れてそれでもなお自分が理想とした形を作り上げた。
「成功ですね。」
後ろから拍手が聞こえた。
「これが他の魔法でも出来るように慣れていけば、あらゆる環境で失敗無く安定して魔法が使えるようになります。
砂漠の土をうねる竜に出来ますし、空気の薄い山の頂上でも薄い空気を自分の元へと集めて呼吸を確保することが出来ますし、固まった土を柔らかく根差すものに変えることも出来ます。
うまくいかなかった。
何が悪いか解らなかった。
考えて答えが掴めた気がした。
それじゃ足りないと見せつけられて悔しかった。
それでも、教えてもらって、見えなかったものが見えるようになって、知らなかったことを知って、そうして今、出来るようになった。
すごく、楽しい。
「慣れればほとんどの魔法を同じような形で使えるようになります。
ほかの魔法の練習もして、やってみますか?」
今まで、ここまでドキドキしたことはなかった。
知らないことを知って、世界が広がって、出来ることが増えて、広がった世界をもっと楽しめるようになった。
今、目の前にはもっと楽しくなる、もっと自分がスゴくなれる道がある。
それがあるなら、行きたいと思う。
もっと広い世界を。
もっと出来る世界を。
もっと楽しい世界を。
「やる。」
手を取った。
子どもの頃というのは、世界が楽しくなるものだ。
出来ることが少なく、容易く出来るようになる。
だから報われて楽しくなり、モチベーションが上がり、胸を躍らせて先へと進む。
あっという間に成長していく。その先へ進んでいく。
だから簡単に転ぶ。
加速して、それに適応し切れず、しかしそれが成長の加速だと、新しい世界の景色だと誤認して、その景色に心奪われ、足元が疎かになり、転ぶ。
それはもう、駆け足で転ぶから、まぁ酷いものになる。
止めないよ。
愚者は経験に学び賢者は歴史に学ぶと言うが、転ぶ痛みさえ知らぬ賢者なぞ、何の役にも立たないのだから。
昨日失敗して他サイトより投稿が遅れてしまい申し訳ありませんでした。




