自主性を重んじる教育方針
魔法とは、魔力で現実に干渉し、イメージを実現する技術。
しかし、魔法とて万能ではない。
イメージが出来ないものや曖昧なイメージの実現はできない。
そして、現実に干渉する時、正しく干渉できなければその干渉は失敗する。
絶縁体に半端に電気を通そうと思っても通らないし、1気圧の状態で常温の水を常温のまま沸騰させることは叶わないし、石の塊や木の根を土として動かして壁にすることはできない。
「魔法使用の際に明確なイメージは必須です。
しかし、厳格過ぎて融通の効かないイメージで魔法を扱うと、こうなります。」
クソガキの『地形操作』は柔らかい園芸用の土のイメージで干渉していた。
だが、土の中には虫がいるし石は埋まっているし木や雑草の根がある。
それらは『土』の特性を持たない。それを無理矢理土として扱い捏ねれば、こうなる。
「今まで成功していたのは小石や木の根の無い場所で魔法を使っていたからです。
ある程度慣れてきたと思ったので、今回は敢えて上手くいかない場所でやってもらいました。」
「じゃあ、いちいち土の中の虫とか石とか根っこを引っこ抜いて魔法を使えっていうのかよ?」
「いいえ、そんなことをする必要はありません。枠組みを厳格にし過ぎなければ一般的な魔法は問題無く使えます。
私が先程作った壁、最後の一つは石が入っていても、地中に根が張っていても問題無く壁が作れましたよね?
私は予め石や木の根があることを前提としたイメージをして、土以外の何かが混ざったものをイメージして壁を作りました。
だから、上手くいったのです。
イメージに余白を持たせる、臨機応変な形にする、定義を少しだけ曖昧にすると言えば伝わりますかね?」
「じゃあなんで、最初っからそうイメージしろって言ってくれなかったんだよ……無駄じゃん。」
「と、思うでしょう?確かに、言うことはもっともです。
けれど、魔法のイメージが出来ていない最初期に、イメージに余白を持たせること、包括的なイメージをすることを教えて、出来ましたか?」
「……出来ない。」
「先ずは明確な魔法のイメージで魔法が使えるようになる。イメージがある程度自由に出来るようになったら、今度は曖昧なイメージでも魔法が使えるようにして行くという流れなのです。
ただ誤解しないでください。
厳格なイメージは学術的な魔法や医学、精密な魔道具政策において使われ、曖昧なイメージの魔法は普段使いの魔法や実戦的な状況下で使われるというそれぞれの長所があります。どちらが上、どちらが下ということはないのです。」
「そうなんだ……」
「本当はこの魔法のイメージについての講義はもう少し後にしようかな、とも思っていたのですが、自分で気付いた様なので、難易度を上げます。
構いませんか?」
悪戯っぽく挑発するシェリー君に対して、クソガキは少し好戦的な笑顔でこう言った。
「やってやろうじゃん。」
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仮称『曖昧魔法』と『厳格魔法』について
『反罪術式癒し手に敵無し』は圧倒的に『厳格魔法』に区分されます。というより、あの術式は『イメージを厳格にする』の極致です。
犯罪術式の『C.D.E.』は微妙なところで、解析に関しては『厳格』ですが、破壊の部分は『曖昧』でも割と作用します。『綺麗に変化させる』というよりも『壊す』が重要なので。




