魔法もそれ以外も、考えることが大事
穴だらけの壁の前に立つと、枝を渡された。『これで中身を見てみろ』ということらしい。
掘ってみると、泥まみれの大きな石が中からゴロゴロ出てきた。
次に表面がボコボコしている壁を指さされた。これも探してみろ、ということらしい。
掘ってみた。けど、何も無い。
今度は一番綺麗な壁を掘るように目配せされた。
どうせこれは何も入っていない、そんなこと解ってる。
「『どうせ何も入っていない。』と、そう思っているのでしょう?」
笑っていた。しかも、めちゃくちゃ悪い笑い方だ。
「え?」
一番綺麗な、穴もデコボコも無い壁を掘った。
絶対に間違いない。なのに、大きな石が出てきた。しかも、今まで見た石よりももっと大きな石が入っていた。
「穴の開いた壁と表面の凹凸が激しい壁、それは貴方と同じ作り方で作りました。
ですが、その壁だけは少しだけ工夫をして作りました。といっても、使っている魔法はすべて『地形操作』ですがね。」
「嘘だろ。」
「嘘ではありませんよ。それは、貴方がよく知っているはずです。」
「じゃ、じゃぁ……」
なんでボクだけ失敗したんだよ……。
「なんで失敗したのか?
それを考え、答えに辿り着けば、貴方は答えを得た次から失敗することは先ず無くなります。そして、その次の失敗を未然に防ぐことができます。」
「どういうことだよ?」
「今回の壁、上手くいかなかった理由は何でしょう?
勿論、石は原因の一つでしたが、もっと大きな理由でこの魔法は成功したり、失敗したりしています。
何故石が入ると『地形操作』は上手くいかないのでしょう?
もっと広く考えれば、『魔法』を使うときには何が必要で、何が邪魔になるでしょう?
実際に魔法を使いながら考えてみることを推奨しますよ。」
わざわざそう言うってことは、それが必要ってことか……
地形操作は失敗するし、他に、成功しそうな魔法……
火を思い浮かべる。小さく、蝋燭の火をイメージする。
『火』
小さな火が手の上に浮かび上がった。
何度も何度も使って、見せてもらって、もうこれくらいなら強くイメージしなくても使うことができるようにな…
パン!
大きな音が後ろで鳴った。頭が真っ白になる。
火が消える。びっくりして飛び上がって後ろを見る。
「どうかしましたか?」
「急に驚かすなよ!」
「これは申し訳ありません。」
「邪魔するなよ、大きな音なんてビックリするだろ!」
「本当にごめんなさい。しかし、まさか、拍手で火が消えるとは思いませんでした。」
「何言ってるんだ?」
「拍手をした時に、火が消えましたよね?だからそう思ったんです。違いましたか?」
「違う、急に鳴ってビックリしてだから火のイメージが出来なくなって……」
「思いがけずイメージに邪魔が入ったから魔法が不発した、と。」
「…………そうだよ。そういうことかよ……じゃぁ、あれはなんで?」
「石以外にも、この辺りには何かイメージとかけ離れた『何か』が埋まっていたのではないでしょうか?」
手を伸ばして辺りを見渡してみせる。
空があって、山があって、石ころが転がっていて木が生えてて……
頭の中でビリっと電気が弾けた気がした。
「じゃぁ、もしかして……」
『地形操作』
さっき失敗したデコボコの壁近くを魔法で掘り返してみる。
そこには、木の根っこが埋まっていた。
「どうやら、正解に辿り着いたようですね。」
「はぁ、やっと気付いたか……やれやれ、魔法を使えずとも話を聞いただけで的確に予測し、拍手を贈られた者もいるというのに、このクソガキは。」
「ペースは人それぞれ、です。覚えるのが遅くとも、一度覚えたら忘れないという方もいるのですから。」
実際に前々話を見て予想的中させた方が他サイトにいました、天晴。
その方はこの世界での魔法適正が中々高いです。




