オドメイドは見た
クソガキの基礎訓練は順調に進んでいた。
訓練を積み重ねたという意味で進んでいる。それ以上に、クソガキのモチベーションも上がっていた。そして、シェリー=モリアーティー先生への印象も変わっていた。
「『地形操作』がうまくいかないことがある。あれ、なんでだよ。」
「『うまくいかない』……ですか。
具体的にはどんな場所で、何をする時に、如何うまくいかないかを教えて下さい。」
「多分、山とか、森の近くとかでよく起きる、普通に壁とか杭とか使おうとすると、思った形より小さくなったり、欠けたりする。」
「場所が山や森付近で、壁や杭、それの形状やサイズに問題が起きる……そうですね、一度その場に行って試してみましょう。」
《山にて》
「………………ここ。
この辺りで、試しに壁を作ってみてください。
表面を出来るだけ綺麗にして、なるべく幅の広い、泥の壁をイメージして作ってみてください。」
ゆっくり、周辺を見渡して止まり、そう言った。
クソガキは理解出来ないという顔をしていた。
『地形操作』
が、それはそれとして魔法を発動する。
クソガキの目の前の地面が隆起し、高さ1.2m、幅3.12mの壁が現れる。
だが、その表面や上部を見ればあちこちに穴が空いている、表面もまばらで凹凸だらけの場所がある。
シェリー君の指示したものとは程遠い。
「ほら、こうなる!なんでこうなるんだ?」
腹を立てるクソガキと対照的にシェリー君は冷静だった。
「調べてみれば解りますよ。」
そう言ってシェリー君がクソガキにあるものを手渡す。
「……枝?」
その辺に落ちていた折れた木の枝。何の変哲も仕掛けもないものを渡す。
「はい。木の枝です。これで壁の中に何があるかを探してみましょう。」
絵面としては泥遊びに興じる子ども。だが、意味はある。
「……こんなことに、意味はあるのか?」
「えぇ、あります。
『自分で発動した魔法が上手くいかない。』その時は、発動させた魔法を実際に調べることが一番ですよ。
一体どこがうまくいかないのか、原因が自分にあるのか、それとも自分以外にあるのか……。
調べられない場合もあるので、その時は別の方法を考える必要がありますが、今回はこれで十分解き明かせます。
さぁ、一緒に調査です。」
そう言って泥の壁に枝を突き刺した。
「これでかよ…」
そう言いながら続いて枝を突き刺した。
メイドのカテナは見ていた。
自分の主と家庭教師が並んで泥の壁を木の枝で突き刺している様を。
メイドは主が今までになく勉強熱心なことが嬉しかった。
メイドは主が家庭教師と並んで真剣な顔をしていることが嬉しくてたまらなかった。
タイトルの元ネタ、知らない人も多いんでしょうな……。
ちなみに、『痛み入ります』・『承知しました』ではありません。




