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80→90への苦悩


 ご貴族様の家でBBQを馳走になるという中々珍しい体験を終え、クソガキや当主、夫人は自室に戻り、使用人らも仕事へ向かい、シェリー君も自室へと戻った。

 そして、その夜。



 シェリー君の研究と試行錯誤は続いている。

 クソガキへの指導は上手くいったが本人はそうもいかない。

 基礎的な魔法を使って直立、歩行、そして走行と続き、全力疾走。

 いつもシェリー君が行っている飼い馴らされた小型犬を操る方法を、暴れ牛でのロデオに変え、動く。

 暴れ牛は真っ直ぐ進むがすぐには曲がれない、手綱を握って変えようとする。

 夜空の下、寒風を切って走る。真っすぐ、右へ、左へ、上へ、下へ……

 普段のシェリー君と比べて圧倒的に速い。暴れ牛に振り落とされずに意図した動きをしている。

 だが、ダメだ。


 長くは続かない。

 今やっている方法、それはクソガキが日中やっていた方法をシェリー君の技術で実用化まで仕上げた状態だ。

 魔力が有り余る人間ならこのまま5分10分止まらず走り続けられる。だがシェリー君はそうもいかない。


 それならば、と今回は別の動きを試す。

 暴れ牛が小型犬に変わる。

 今までの力強い動きは鳴りを潜めるが、その分動きの精緻さは段違いになる。

 小型犬が走り出す。そのままある程度真っ直ぐ走り、曲がる、その瞬間暴れ牛に豹変する。

 「っ!」

 瞬間的な強化。動きの継ぎ目の瞬間に魔力量を変えて急加速、急転換。だが上手くいかなかった。

 その場で回転しながら地面に叩き付けられる。地面は柔らかく下は草なので怪我は無い。

 今のは加速への移行が上手くいかなかった。それだけでなく急激な変化に当人の反射が追い付いていない。

 加速の時間を絞り、動きの変化の瞬間にそれを置くことで『相手が適応出来ない急速な変化』を作り出すという狙いは理解できる。実際、相手の動きが変化する瞬間にこれをやられては面倒だ。

 だが、予測している当人でさえ適応し切れずに振り回されて制御出来ていない。

 そして、たとえ適応と制御が出来たとて、急激な動きの変化のせいで体のあちこちに負担がかかる。これは身体強化をしたとて負担も強化されているので解決にならない。

 これでは次の動きに繋がらない。無理に繋げても、あっという間にひび割れ、それが広がり、崩壊する。



 今度は暴れ牛から始め、変化のタイミングで小型犬に変える。

 これは確かに負担が減る。動きの変化を穏やかにすることでシェリー君の持ち味たる精緻な動きも損なわれない。

 だがこれでは魔力の消耗が激しい。なんの解決にもならない。

 0→50への変化は成功。だが80→90への苦悩はまだまだ続く。



 『手にしたものは一見役に立たないと思えても、いつかきっと役に立つ。』

 『失敗も、回り道も、今まで積み上げてきたものがきっと活きる日が来る。』

 そんな甘いこと、私は言わない。

 何を世迷い事を言っている?役に立てろ、活かせ、そのために考えろ。

 でなければ役立たずは役立たずのまま、

 失敗も回り道もそのまま。

 手にしたものの使い道を、失敗の理由を、最短ルートを、考えろ。積み上げたものを武器にしろ。

 でなければ人生は無意味なままだ。

 ブックマークありがとうございます。

 

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