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宴と言うには少し礼儀正しいBBQ


 肉の焼ける音と匂いがここまで漂ってくる。

 焼いているのはコック、焼いている肉は羊だが、その手元には色艶の良い牛、豚、鶏も控えている。

 肉だけではない。赤、緑、黄色、紫、白……色鮮やかな野菜も山盛り用意されている。

 「こちらのお任せで焼いているものもありますが、リクエストがあれば遠慮無く言って下さい。お好みのまま、用意しましょう。」

 巨大グリルの前にコックの汚れ一つ無い白い戦装束(正装)で立つ。良い笑顔をしている。

 立ち上る煙はこちらに届かない。だが香しさだけが届けられる。

 寒さは無い。心地好い温もりが包んでいる。

 真っ暗な夜空の中に赤青輝く星々が見える。だが我々は闇の中ではない、魔法の灯で照らされていた。


 何があったか説明しよう。

 クソガキが早めに訓練を終え、部屋に帰っている際、それを見たコックが『何か良いことがあったのか?』と訊ねた。

 クソガキの質問の答えを聞き、笑顔になったコックは『用意していたビーフシチューの煮込みが丸一日分丁度足りないから』・『丁度新鮮な肉と野菜が余っているから』・『今日の夜は天気が良いから』という完璧な理論武装で夕食を屋外BBQにした。

 ちなみに、コックには『どんな質問をしたのですか?』と訊いたが、笑みとウインクを返すだけで、結局回答は無かった。

 だが、この状況はもう答えだ。誰にでも解る。


 「羊と牛と豚と鶏、全部頂戴!よく焼いてね!」

 「わかった、その順番で良いか?」

 回答は沈黙、そして全力の肯定の首振り。

 目は月と星に照らされて輝いている。

 「よし、じゃぁ坊のは肉全部乗せだな。今から焼き始めるからちょっと待っててくれ。」

 金属製の串に鶏、豚、牛、羊の肉を突き刺し、陽炎揺らめくグリルに載せる。

 音が一層響き、クソガキが息を呑む。

 「あぁ、じゃぁ私は今焼いているものを貰おうかな……」

 「承知しました。じゃぁこれを持ってってくれ。」

 「かしこまりました。」

 オドメイドがコックから熱々の串を受け取り、外し、当主の前に差し出す。

 謹慎を解かれたばかりのオドメイドが機敏に動く。

 「あ、じゃぁ焼けるまでおまかせを頂戴!串は外さないで、そのまま食べるから!」

 「モンテル様、それは流石に……」

 メイドとして狙いを察して止めようとする。だが、それに対してコックは大きく笑った。

 「ハッハッハ、解った。ならそのまま渡そう。」

 「ま、待って下さい。」

 慌てるオドメイドを笑って止める。

 「屋外で肉を焼いた時は好きに焼いて好きに食うのがマナーだ。

 串から外したまま食って良し、それをナイフで切って食べて良し、どころか串のまま豪快にかぶりついて食って良し。

 軽く塩コショウはしてあるが、欲しければテーブルのソースや塩、コショウをかけても良い。

 そもそも部屋の外で食べてる段階で相当なルール違反なんだ。今日くらい、笑って多めに見ておくれ。」

 笑いながら何本もの串を忙しく動かす。観念したようにオドメイドは肩を落とした。



 ブックマーク、いいね、またいただきました。ありがとうございます。

 いいね、最新話でもらってましたよ、ありがとうございます。見てますか?見てますよ(なお、誰が贈って下さったかまではこちらから解らないので、ご安心ください)。

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