間違い探しをしてみれば
クソガキの今の模擬訓練の評価:
魔法については今まで見たものをようやっと真似出来るようになったと評しておこう、だが問題はある。
『地形操作』が特に顕著だが、魔法の連発をした結果、一つ一つの魔法の精度が落ちた。
シェリー君が炎を防いだ壁を杭一つで破っていた。もし、相手を殺傷する目的なら杭の先を鋭利にしておく方が、複数の杭を向ける方がより確実で、何より対処の為にそちらに警戒心を向けさせることが出来る。
壁を生成してシェリー君の逃げ場を潰したアレもそうだ。魔力がなまじ有るせいで雑に魔法を使う悪癖が付きつつある。
勿論、見せることで相手に警戒させる、思考を割かせるという戦術が無い訳ではないが、露骨にやり過ぎると次の手を予測される。
露骨な挟み撃ち。逃げるなら上か横。特に背中が壁なら面での攻撃を警戒する。
だから案の定次の手は面攻撃の『火球』だった。
その『火球』とて、タイミングが早過ぎて対応された。
あれは相手の動きを見て対応するそれではなく、元々頭の中で考えていた理想の行動を手引書通りにやるそれだった。相手の思考を奪おうとして自分の思考に余裕が無くなってしまえば世話は無い。タイミングをずらし、こちらの跳躍が終わるか否かのタイミングで使えていれば、完全な空中であれば、『地形操作』の発動が間に合わずに撃ち落とせていた。
『身体強化』をブラフとした『火球』。上手く使いこなせるなら文句は無いが、あまりに拙い魔法でそれをやっては自分の動きを鈍くするだけだ。
それに対応された結果、自分は火で視界を潰され、反応が遅れた。
見えなくなるくらいなら小さな火球をばら撒いて相手に確実に当てるか捌かせるかを強制させ、次手で仕留められたものを、という話だ。
最後体術で組み伏せられた時もそうだ。あの状態なら自分を燃やすなんて物騒な手を使わずとも、自分が地面に触れているのだから『地形操作』で相手だけ串刺しにすることも出来た。
相手はこちらを拘束する以上、動けない。楽に命中する的だ。避けられたとて、拘束から逃れるのだからそれはそれで良し。
私の結論としては、あまりにお粗末で拙いと切り捨てておこう。
落第だ。追試は無い。
私の結論は、そうだ。
拘束を解き、起き上がったクソガキに語り掛ける。
「成長は確実にしています。」
「嘘吐き。今までとおんなじ、ボッコボコにしやがって……」
「……気付いていないのですか?今の貴方はこれを使っていなかったのですよ。」
シェリー君が懐から取り出したものを見て、クソガキがようやっとハッとなった。
『H.T.』
シェリー君の護身用の武器であり、今までクソガキとの基礎訓練では、クソガキの防具兼魔法行使の補助器具として使われていた。
「補助器具があった時と同じ動きを出来ていた。この意味が分かりますね?」
シェリー君の結論としては、合格ということだ。




