クソガキの成果
『地形操作』
シェリー君に迫る火球を泥の壁が止める。壁表面の水分が蒸発し、ひび割れ、止める。
『地形操作』
今度はシェリー君の魔法ではない。シェリー君が作った壁がこちら側にひび割れ弾け、その中から隆起した土の杭が生えてくる。
杭はシェリー君の壁を突き破り破片を飛ばしながらこちらに向かってくる。
『身体強化』
壁の異常に気付いた段階ですでにシェリー君は後ろに飛び始めていた、十分間に合う。
『地形操作』
背中に壁が展開される、逃げ場が無くなった。
シェリー君の手口をダウングレードして辛うじて自分でも使えるようにしたな、悪知恵の回るクソガキめ。
『地形操作』
後ろに壁、前からは杭。ならば逃げ道は横か上、今回は上だ。
隆起した地面がシェリー君を上に撃ち出す。
『火球』
空中に飛び出す寸前、クソガキから火の球が撃ち込まれる。空中で無防備な状態を狙うつもりだろうが、タイミングが早過ぎる。
『身体強化』
『地形操作』による射出を途中で中断、切り替えて横に飛ぶ。
火球はシェリー君の横を通り過ぎ、土の杭は射出台を折るに止まった。
『身体強化』
こちらから攻撃しても特に勝利条件には影響は無いが、敢えて攻め込む。
こちらに『地形操作』しかまともな遠距離攻撃手段が無い以上、魔力にモノを言わせて遠距離攻撃をされ続けていてはジリ貧になるからね。
『身体強化』
クソガキもその意図に気付いて構える。と見せかけ……
『火球』
『身体強化』を解除して、距離を詰めに来たこちらに特大の火球を叩き込む。
距離を詰めようと動き始めたお陰で火球に突っ込む形となり……
『地形操作』
ギリギリのところで地面から坂道の様に壁を生やして斜め上に跳躍、そのまま火球を飛び越えていく。
ちなみに、先程の『火球』も『地形操作』も、全て直撃していれば十分骨折や重傷確定の威力だった。
まったく、こちらがシェリー=モリアーティーとはいえ、躊躇いなく致死性攻撃を乱射するとは非道いものだ。
『強度強化』
火を超えて無事着地。
『身体強化』から『火球』に急速に変化させ、火で視界を自ら塞いでしまったクソガキの対応が、一手遅れる。
『身体強化』
『身体強イ うわっ!』
こちらが使用する魔法は3つだけ、しかも同時使用も制限している。
だが、武術体術の類は一切制限していない。
あっという間にクソガキは組み伏せられ、腕を掴まれ敢え無く地面に伏すことになった。
「……負けた。」
一通り藻掻いたがビクともしないことを悟り、降参した。
「今回は無理矢理自分の腕を燃やす様なことはしないようで、ホッとしました。」
クソガキを解放しつつ手首の火傷を『反罪術式癒し手に敵無し』でしれっと治していたが、今回は敢えて何も言うまい。
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