見直しの時間
それから暫く。
『身体強化』
『強度強化』
「捕まえましたよ。」
『身体強化 』
『強度強化 』
「うまくいきませんね……」
『身体強化』
『強度強化』
「捕まえましたよ。」
『身体強化 』
『強度強化 』
「うまくいきませんね……」
『身体強化』
『強度強化』
「捕まえましたよ。」
『身体強化 』
『強度強化 』
「うまくいきませんね……」
『身体強化』
『強度強化』
「捕まえましたよ。」
『身体強化 』
『強度強化 』
「うまくいきませんね……」
『身体強化』
『強度強化』
「捕まえましたよ。」
『身体強化 』
『強度強化 』
「うまくいきませんね……」
『身体強化』
『強度強化』
「捕まえましたよ。」
『身体強化 』
『強度強化 』
「うまくいきませんね……」
何日も何日も、昼夜それぞれがうまくいかない中で右往左往試行錯誤を繰り広げる日々が続いた。
結果……
『身体強化』
クソガキの速度が上がった。
現状、足にだけ『身体強化』を集中させるという単純な方法しか取れていないが、最初の鬼ごっこの時よりはマシになった。
魔力量の関係で兎に角魔力に振り回される無駄の多い拙い魔法だが、随分マシだ。
「上達しましたね。では、この状態で再度鬼ごっこと参りましょう。」
「絶対勝ってやる……」
『身体強化』
やる気を漲らせて走り出す。
その背中を見たシェリー君は気持ちを押し殺しながら佇んでいた。
「『あっという間に成長しているのに対して自分は進歩無し。』とでも言いたげだねぇ。」
「いいえ、そんなことは…………」
「そんなことは…………何かね?」
「……あります。」
「あれは基礎的な部分が出来ていなかった。だから簡単に急速に成長できているんだ。
努力をしていない0点のテストを努力させて30点にするなんて簡単だ。
だが君は違う。既に努力をしている。95点のテストを100点にしようとしているんだ。」
「買い被りすぎです。」
「なら80点にしよう。君が間違えた20点はケアレスミス10点と純粋な誤答10点。
ケアレスミスは注意して検算するとして、誤答はそうもいかない。
80点の実力者が解けなかった問題だ。作成者が答えの存在しない間抜け問題を作ったか、よほど面倒な応用問題か、現在解き明かされていない超難問か、シンプルに君が知らないか……。兎にも角にも一筋縄で答えが出るものではない。冷静になるように。目の前に向き合わねばその先はやって来ない。
さぁ、すでに15秒経過している、そろそろ追いかける時間だ。」
走り抜けたクソガキの方へと目を向ける。振り返らずに真っすぐ進んでいた。
「この前よりはまともに走れるようになったクソガキは果たしていつまで逃げられるか、逃げ切れるか?」
「……行きます。」
『身体強化』
『強度強化』
非常に静かな走り出しだった。




