おとぎ話『三騎士と剣』
『三騎士と剣』
むかしむかしのこと、老騎士が若い騎士を三人集め、それぞれに自分が持っている剣を一振り譲ると言った。
一人目の騎士は新品の剣を選び受け取った。選んだ理由はこれが一番傷の少ない剣からというものだった。
二人目の騎士は豪奢な装飾の剣を選び受け取った。選んだ理由はこれが一番価値有る剣だからというものだった。
三人目の騎士は老騎士が若い頃から使っていた錆びたボロボロの剣を受け取った。選んだ理由はこれが一番強い剣だからというものだった。
老騎士は三者三葉の目を称賛し、送り出した。
一人目の騎士は、傷の少ない新品の剣で着実に瑕疵の無い成果を積み上げていった。
受け取った剣はすぐボロボロになって次の剣を使うようになったが、最初の剣は初心を忘れない様にと沢山の子どもと共に眠る寝室の、鍵付きの飾り棚に飾った。
二人目の騎士は、己の強さこそ凡庸ではあったものの、輝く才を見抜く審美眼を活かして勇猛果敢で品行方正な騎士団を作り上げた。
受け取った剣が引き抜かれる機会は少なかったものの、輝ける騎士団の団長に相応しい輝きを放ち続けた。
そして、三人目の棋士。
彼は流浪の騎士となり、人々の為に剣を振り続けた。
錆びてボロボロ、今にも折れそうなその剣は、しかし折れる事は無かった。
老騎士と共に錆びようとも折れずに生き延びたその剣は確かに強い剣だったのだ。
恐るべき化け物の牙や爪に負けず、強大な力を持つ武芸者との打ち合いに負けず、ついに岸は『青剣騎士』というおとぎ話になる程の強さを手に入れた。
受け取った剣は錆びてボロボロ、しかしその剣は強者の証として光を浴び、そして『青剣騎士』が次代の若い三人の騎士を集め、送り出すまで彼と共に生きた。
そして、伝説は受け継がれたのでした。
めでたしめでたし。
これは、『三者三葉に己の力を理解し、それを刃とすべし』・『己が成った後、次世代に惜しみなくそれを渡すべし』という教訓の話だ。
だが、誰も彼もがこれを単なるおとぎ話だとは思わない。
歴史の中にはひねくれ者がいる。
穿った見方をする者がいる。
己の普通が他と違う者もいる。
とある変わり者の魔法学者は考えた。『青剣』は、実在するのかと。
巷のペテン商人が売る安物ではなく、化け物や武芸者と渡り合う業物はあるのかと。
男は変わり者だった。そして、己の好奇心を追求する克己心があった。
そうして、一つの結論は出た。
老騎士の錆びた剣、『青剣』は、とある条件を満たせば実在し得る。と
その条件とは……
投稿予約をした段階で評価といいねを更に頂きまして、これ、またランクインしそうです。(追記:ランクインしていました。)
ありがとうございます。そして一つ、著者が忘れないように言わせて下さい。
淑女は好きなキャラですが、本作の主人公はモリアーティー’sです。
そして淑女はメインヒロインです。
『三騎士と剣』というおとぎ話はかなり有名なもので、そこから派生した『青剣騎士』も子ども達に大人気!当然その中に出てくる『青剣』は歴史上、贋作が幾振りも現れました。
当然、粗悪な紛い物は石にぶつけただけで折れるので見破るのは簡単なのですが、そうでない業物もあって、それら精巧な贋作を見破るのは至難の業とされていました。
なんでこうなったか?と言えば、意図せず本物の青剣の贋作が生まれてしまうからです。




