助けに来たのは
※前話に続き未だ要注意です※
裏通り とある一本道にて
そこに立っていたのは、知らない人だった。
今日見たばかりの服を着ていた。
魔法を教わった時に何度も何時間も何日も見ていた顔だ。
けど、知らない。
「ケガは無い…とは言えませんね。病院にすぐ行きましょう。」
真っ直ぐ自分を見る家庭教師の言葉に対して、首を縦に振った。何度も何度も、気持ち悪くなっても振った。
「なんだお前。」
「怪我の治療が終わったら、すぐに反省会を行います。これだけのことを浅慮にも行い、騙され、その上多くの人に迷惑と、それ以上の心配をかけたのです。覚悟してくださいね。」
首を振る。何度も振る。顔が、体がズキズキ痛いけど、頭が揺れて痛くなっているが構わずに振る。
「おいテメェ、無視すんな!」「今日はもう帰りますよ。」
完全に無視をしていた。まるで、コイツが見えていないかの様に。
「さぁ、何をしているのですか?帰りますよ。」
視界が歪んだ。指先が冷たくなって足が痺れる。息ができなくなる。震える。
痛くなくなった。だけど、もっと別のものが沸き上がってきた。
「無視するな。」
「静粛に。」
鋭い声じゃなかった。けど、息をする音もしちゃいけないと思った。
「帰りますよ。」
怖い顔をしているわけじゃない。むしろ涼しい顔をしていた。
大きな剣や魔法を突き付けているわけじゃない。買い物の途中みたいだった。
怖い言葉遣いでもない。
だから怖かった。怖がる部分が全く無くて、怖がる理由も、怒っていると思う理由も無い。
それでもあいつは今、物凄く怒っていることがわかるから。
「無事に返すと思ってんのかよ!」
そう言って何か合図をした。そうしたらアイツの後ろから2人組の男が飛び出してきた。手にはナイフと木の棒を持っていた。
「ム゛ー!」
声を出そうとしたけどボロ布のせいで出来ない。アイツは気付いていない、危ない。
当の本人には笑顔が浮かんでいた。
「危なくありませんよ。ほら、この通り。」
後ろに目でもあるかと思った。
いつも使っているあの布を軽く顔の前で振った。それが生き物みたいに背中に回り込んで襲い掛かる2人をあっという間に縛り上げた。
『電撃』
縛られた2人の体が空中でビクッと動いて、止まった。
「脅威ではありませんから。」
縛られた2人が解放されて、地面に崩れ落ちた。動いていない。
「さぁ、帰りましょう。」
目の前には脅威は無いのですから。
目の前に恐ろしい奴が近付いてくる。
シェリー君は完全に怒り心頭だ。
クソガキが殴られて今も手荒に扱われているということが一目見て解ってしまったのだから。
そして、そんな状態になる前に止められなかった自分にも怒り心頭だ。
私では止められない。
私は止める気がそもそもない。
うっかり止めてみろ、こちらに怒りが向けられる。止める理由も無い。
「速やかに、終わらせます。」
それは私に対するものではなく、自分がこれから行うことの確認であり、相手に対する処刑宣告だった。
あの術式を持たせたシェリー君をキレさせる勿れ。
評価とブックマークありがとうございます。
そして1700話を超えました。相も変わらずキリ番のところでロクでもない描写で失礼いたします。
そして、長い間作品にお付き合い頂いている皆々様、ありがとうございます。これからも応援よろしくお願いいたします。




