だれか たすけて
※ここから数話分、少々暴力描写となります。苦手な方はご注意ください※
描写が終わったら次の話の前書きにざっくりしたダイジェストを置くので、飛ばす方も安心してください。
「おい、なんで本当に縛るんだよ!おかしいだろ!やり過ぎだろ!」
縛り付けたクソガキがあまりにも喧しい。
もうすぐ手紙に書いた時間だ。ここまで来て気付かれて逃げられたら元も子も命も無い。
「黙れ。」
「ふざけるな!ほどけよ!これほどけよ!」
本当なら縛られたフリをした自分が不意を突いて家庭教師を襲撃するはずだった。それなのに、今のこの状況は明らかに予定外だ。
「せっかく考えた計画台無しにしやがって!お前らあとで……」
急に言葉が途切れた。
「へ?」
人は殴られると、痛み以上に殴られたという衝撃で認識とそれに対する反応が遅れる。
だから、後からやってくる。
頭が揺れる。
痛い。
なんで?
「口も塞いどけ。これ以上騒がれると面倒だ。」
口を塞がれた。
汚いボロ布で口を塞ぐなと怒れなかった。
怖い。
変な感じはしていた。
コックの知り合いなのにコックとは似ても似つかなかった。優しくなかった。しかもコックのことを何も言わなかった。
わかった。
こいつら、違うんだ。間違えたんだ。
どうしよう?
縛られてる。
手が動かない。
足が動かない。
逃げないと!
逃げないと!
教わった方法!
なんだっけ?
逃げないと!
何をすればいい?
今誘拐されてる。
逃げるって走る?
どうやって?
やり方がわからない。
手が動かないから
足が動かない
しゃべれない。
死ぬ
どうしよう?
逃げないと!
逃げないと!
逃げたい!
帰りたい!
頭の中がいっぱいいっぱいになった。
なにも できない
『 』
声が聞こえた……気がした。
そうだ!
手が動かない。
足が動かない。
しゃべれない。
だけど、魔法は使える。
『火炎』
小さく手と足で火が燃える。
熱い。けど火傷はしてない。
真っ黒になった縄に力をいれるとあっという間に千切れた。
手が動く
足が動く
しゃべれないけど
魔法が使えた
だから逃げられる!
「調子に乗んな!」
後ろから思いっきり蹴飛ばされた。
前に進んで、落ちて、頭から地面にぶつかった。
頭がグラグラして痛い。目が回って前に何があるのかわからない。
頭がもっと痛くなって、体が浮き上がった。
「ガキ、いい加減にしろよ。」
髪の毛を掴まれていた。
暴れて殴ろうとして、する前に腹パンされた。
「ぅ゛……」
涙が出る。吐きそうだけど、口を塞がれてて吐けない。
「お前は人質としてそこにいりゃぁいんだよ。喋るな動くな肉盾。
ま、生きてても死んでても関係無いか。」
ナイフが見えた。
何も話せない。
動けない。
体中痛い。
もう、誰でもいい
なんでもいいから
だれか 助けて
『地形操作』
石の弾丸が高速回転しながら横切った。
ナイフが折れた。
「ここにいたのですね、探したのですよ。」
心の叫びを聞いたのは一人の家庭教師だった。




