裏路地で、花屋で、カフェで。
悪巧みはどこででも行われている。
あちらで、こちらで、そちらで………………そして、悪巧みが一ヶ所で一つだけ起こっているとは限らない。
裏路地にて。
「お前達臭いんだよ。一体いつ風呂に入ったんだ?」
ものすごく臭い。
息ができない。
気持ち悪い。
犬とか鳥のウンコは落ちてるし、ゴミの山が壁みたいになってるところもあるし、ゲロはあるし、こいつらも臭い。
こんな場所とは思いもしなかった。
けど、我慢だ。ここまで来て逃げるなんて絶対許さない。絶対に泣かしてやる、負かしてやる、ぼっこぼこにして勝ってやる!
「おっと坊っちゃん、追加料金だ。」
こっちに汚い手を突き出す。
「またかよ!何度目だよ!」
「その家庭教師先生を潰すんなら頭数が必要だ。
武器と人手を用意するには金が要るんだよ。」
さっさと寄越せと手を伸ばす。
ただで手を貸してくれるって話だったのに、嘘つき!
そう思ったから金を投げつけてやった。
「これで十分だろ、さっさとしろ!」
投げつけた金を全部止めて、それを見て気持ち悪くにやにや笑っていた。
既に事件は起きている。
花屋にて。
「カテナちゃん、久しぶりー。元気にしてたー?」
「お久しぶりですフローウィアさん。お陰さまで元気です。」
「みたいねー。前に来た時よりずっと明るい顔してるものー。
なにか良いことあったのー?」
「……実は私の主が最近家庭教師の先生のもと、非常に熱心に学んでいまして、そのお姿が楽しそうで、凛々しくて……」
「あらあらあらー、羨ましいわねー。」
にこやかな花屋の主人とメイド。
変わらない日々に嬉しい変化が起きていた。
カフェにて。
「すみません、情報をいただいた上にお手伝いまでお願いしてしまって。」
「なんのなんの、気にするようなことではないのー。」
「ねぇねぇねぇ、僕たちはお手伝いをするのが仕事なんだから当然のことなんだよ、ねぇ。」
「お二人に感謝を。
よろしくお願いいたします。」
頭を下げる会長に対して部下二人は笑顔で返してその場を後にした。
「では、張り切っていくかのー。」
「ねぇねぇねぇ、これで僕たち少しは力になれてるかな?」
「うーん、なれているとは思うが、微々たるものかのー。なにせ……」
地獄の原風景を思い出す。
『商人が命に値段をつけるとしたら、最高の値をつけなくてはなりません。
特に自分の命は、全財産以上の額を提示しなくては、ですよ。』
「命の恩。この程度では利子にもならんのー。」
「そういえばそうだねぇ。」
命を救われ、劇的な人生を歩むことになった二人が密かに動き出す。




