順調なチェーン展開
シェリー君が一人になった後。
一先ず、4本の大通りを歩いて行こうということになった。
ここは南の大通り。売っている物の割合としては食料品が多い。大通り沿いには露店と比較的背の低い商店、そしてその奥へと目を向けると商店よりも背の高い画一的な建物。
洗濯物が干されているあたりあれらは住居だな。
建物が西を背にして東側から明かりを取るようになっている。朝日を取り入れ西日を建物が遮るというわけだ。
ベッドタウン、人々の住む町という働きを持った区画だ。
それはまぁ置いておこう。何故なら、もっと注目すべき点があるからだ。
「太陽揚げ~太陽揚げはいかがっすか~?流行りのファストフード太陽揚げ。外はサクサク中は冷めにくい!おまけに食べやすい!お嬢さん、おひとついかがっすか?ウチが新たに開発した太陽揚げですよ。」
ニコニコ営業スマイルを顔に貼り付けた男がシェリー君に寄って来る。
世間知らずのお嬢様をカモる心算なのは見え見えだ。
『新たに開発した太陽揚げ』
この男がこの料理を開発していないことは明白だ。何せ本家本元レシピ製作者は目の前にいるのだから。
だが、この文言を嘘だと指摘してもこの男はこう逃げる。
『太陽揚げ自体を発明したわけじゃありません。これは最近流行ってる商品ですが、ウチのは中身が違います。私は中身を新たに開発したと言った心算なんですよ。』と。
コスい詐欺師の様な手口。嘘を騙っていないが真実も語っていないし、誠意は無い。
見れば調理器具一式は新しく、男の手も料理人のそれではない。家事をやった人間ならお前が作ったという言葉を信じはしない。
「今はお腹一杯なので、また後程、失礼いたします。」
男の脇をすり抜ける。こちらが背を向けた途端、男の営業スマイルが剥がれ、再度貼り直して次の客へと向かった
「あら、そこのお姉さん、太陽揚げ食べてかない?できたて熱々よ。元祖太陽揚げ、私が作ったの、食べて食べて!」
男をすり抜けた途端次は老婆が現れた。
元祖はスバテラ町に、正確には今君の目の前にいるお姉さんが元祖を作り上げた偉大な真祖だよ。君の棺桶代は彼女持ちだ、有難く崇め奉るといい。
「お腹一杯なので。」
更に躱す。
見渡せば、あちこちに太陽揚げという単語。
新品の調理器具を手に元祖だの本家だの総本店だの最強だの創始者直伝だのウチが最初だの胡散臭い名乗りをあげていた。
「スバテラ町から広まる速度が速い。明らかに異常な速度だ。」
人為的な企みがあって流行らせている者がいる。
店を見れば皆一様に同じ型の新しい調理器具を手にして、材料の粉は同じ袋から取り出されている。
そして、調理器具や袋には見覚えのある『虎と武器のシンボル』に見せかけた『虎狩りのマーク』。
そして、道の向こうには見慣れた名前の商会があった。
『モラン商会 モーブ支店』
×会長との繋がりでゴードン家に取り入った。
〇正々堂々申請して店を出した。スバテラ村の前にそもそもあった。
これからどんどん支店が出ますが、偶然行き先にあるわけではなくどこに行ってもあるだけです。




