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天変地異は音も無し

ある程度距離を置いた所でまた肉体の主導権を貰う。


フッ


さぁて、では邪魔者が居ない内に、仕上げるとするか。






「何で?」

「何故⁉」

「何故なの⁉」


その晩、ミス=フィアレディーからの折檻を終えた三人は、重い足取りで3階の自分達の部屋に戻った。

部屋に入り、扉を閉めてベッドに突っ伏した途端、ベッドに八つ当たりとばかりに拳をぶつけてそう言った。

部屋は別々だが、『納得出来ない。』という顔で不貞腐れながら喚いているその姿を見られる者が居たとしたら、その様はまるで難易度の高い間違い探しだっただろう。

「ハハハ、、、、、、、、、、、、何でよ!何でなの⁉アイツ何様のつもりなの⁉」

「フフ、フフフフフフフフフ………………何故⁉何故私がこんな目に遭っているの⁉何故私が失敗したみたいになっているの⁉」

「オーッホッホッホッホッホッホッホッホッホッホッホッホ!!!!何故⁉私未だ何もしていないわよ⁉」

三者三様。しかし、その根幹にある物は同じだった。


「「「アイツは絶対に許さない。」」」


彼女ら三人は、今まで以上にシェリー=モリアーティーに対する悪意と嫌悪、更には敵意を強めていった。





その頃、彼女達の上、9階の一室で件のシェリー君は勉強の真っ最中だった。

「本日の授業においてシェリー君が間違えた問題や苦手な問題を改善するべく作った問題全20問(私謹製)。全20問中…………全問、正解だ!」

「ッッッッッ……………!!!やりました!」

胸の前で両の拳をグッと握りしめるとそれを天井へと突き上げた。

「随分と成長をしたものだ。出会ったばかりの頃とは…………見違えたものだ。」

成長とは美しく、面白いものだ。

「さぁて、ではシェリー君、本日の分の課題は終わった。

無理は禁物。何事に対しても、余裕を持って挑む事が大事だ。

少し早いがもう眠るといい。

なぁに、今のシェリー君のスピードならば、前にも言ったが、夏休みまでに見違える程洞察力や観察力、思慮……といったものの鋭さが増すだろうさ。格段に…ね。」

シェリー君はいそいそと眠る支度を始め、あっという間に着替えると、面白い形の明かりの火を消して眠ってしまった。

如何やらアルコールランプの油版と言ったところだろうか?面白いランプも有ったものだ。

明かりを消すと、跡には燃えた油の匂いだけが残った。

スー スー スー スー

寝息が闇の中で聞こえる。

………そろそろ、良いだろう。


フッ


バサ

寝間着姿のシェリー君がいきなり布団を撥ね退けて起き上がった。

あぁ、中身は私だ。

シェリー君は非常に真摯に努力をしている。

そして、それは美徳である。

このまま行けばイレギュラーが幾つ起きても夏休みまでに最低限の下地は出来るだろう。


問題無い。


あぁ、問題無さ過ぎる(・・・)


「悪いとは思わないよ。シェリー君。」

私はそう呟き、灯りのついていないランプを手に、音も無く、外へと出て行った。


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