学ぶ、真似ぶ
「無事ですか。」
落とし穴の上から覗き込んできた。
「お前がやったんだろ、ふざけんな……」
地面を殴りたかったし、土を投げつけてやろうかと思ったけど、やめた。
そんなことをしたら落とし穴の中に作ったフタに穴が開くかもしれないから。
「落とし穴全てを埋め立てることはできない。それなら落とし穴の途中に自分が落ちても問題無い臨時の足場を作ればいい……あの状況でよくできました。けれど……」
パチンと指を鳴らした。
作った地面からバキバキ音が聞こえる。
「おい……嘘だろ……ウソだろ…うそだろ、うそだろ!」
作った地面がバラバラに割れて、体が浮き上がる感覚がして、底の無い落とし穴に落ちて…………尻もちをついた。
「嘘ですよ。
『地形操作』で底の部分の土の色を暗くして、光が入らないように入り口部分を少し細工して、底の無い落とし穴に見えるようにしただけの、浅い落とし穴です。
私の魔力量ではそんな深い落とし穴、作れませんよ。」
「ふざけやがって……」
「真面目に考えることが絶対的真理や正しいとは限らないのですよ。
今の落とし穴への対策も、生真面目に穴を塞いだり、水で満たしたりせず、私の意趣返しを更に返すものでした。そうでしょう?
さぁ、夕食までまだまだ時間があります。続けましょう。」
手を伸ばしてきた。そんなもの取るわけがない。
『地形操作』
代わりに落とし穴を仕掛けてやった。こんな小さな穴ぼこじゃない、ちゃんとした大穴をアイツの足元に……
「不意打ち。騎士道精神には反しますが、実践形式なら合格点です。
ただし、学び舎や正式な決闘や試合では使ってはなりませんよ。失格になる上に悪評や誹謗中傷、やっかみの原因にもなるので。」
『地形操作』
這い上がって平然とした顔のコイツの足元を見ると、深く大きな穴の上にできた梁の上に立っていた。
「私は魔力量が少ないので、こういう形でないと対応ができません。」
ボクを完全に負かしていたのに、その表情は嬉しそうには見えなかった。
「さぁ、続きを始めましょう、『地形操作』。」
地面が割れて空洞の筒が現れる、しかも何本も。
「次は弾丸の数、精度と威力、速度を上げるので、対応してみましょうか。」
「この流れでそれやるの、おかしいって!」
『身体強化』+『強度強化』+『地形操作』
全力で逃げ出す。後ろからシャレにならない速さと数の何かが飛んできた。今度は見えもしない。けど、聞こえる音が違う。さっきよりもものすごく……怖い。
「貫通力が上昇しているのなら、壁を厚くするよりも、壁の質を変えた方が良いかもしれませんよ。」
「ぅぅぅ…………『水流操作』・『地形操作』!」
この前やられたことをそのまま返す、シャクだけど。
泥を作ってそれを壁にする。
壁の向こうで何が起こっているかはわからないけど、貫通はしてこなかった。
いいね、ありがとうございます。
何をしたかと言えば、円錐形の土の塊を高速回転しながら射出していました。
本来の運用方法は、弾丸サイズにして強度強化で強度を底上げして足裏からひび割れの予兆無しに撃ち込んで機動力を奪い取ったり、弾丸が体内で弾けて……という極悪技です。当然教授考案。
『消費する魔力量は少なく対処を強制させて相手の思考と手段を減らず、シェリー君向きだ(教授談)。』
『正規の使い方をいたします(シェリー君談)。』




