※教えたのは当然のように教授です
「クソガキのイメージなんて壊してやれ。」
「教授、それはあまりにも」
その後に続く『暴論』という言葉を遮る。
「クソガキが最初に宣っていた『魔法』を覚えているかね?
あんな出来損ないの魔法擬きを『魔法』だと言い張っていた。
だが、今のクソガキはあれを魔法とは決して言わない。何故か?
クソガキの魔法の定義が破壊されたからだ。今までのクソガキはあれを魔法の定義に入れていたが、シェリー君が介入したことで魔法という認識が徹底的に破壊された。
クソガキの頃の価値観や自尊心や常識なんて論拠も核も無い脆弱なものだ。徹底的にぶち壊してやれ。」
「その後は……?」
「直させろ。
自分の手でどう壊れたか、何処が脆かったか、どう強くすれば良いか、瓦礫になった己の価値観を見て改めさせろ。それが出来なければいつまでも子どものままだ。
『過ちや損傷部分を壊して、組み立て直して、そうしてより良いものに』そのコンセプトを知らないとは言わせないよ。
脆弱な価値観なんて壊してやれ、徹底的に。
手なんて抜かずに君のできる極限の破壊を見せて、価値観を瓦礫の山どころか塵にしてやれ。
そして、その上で直す手伝いをするんだ。そこから新たにより良いものを作れるように。
魔法はイメージだ。
それは私が元々知っていた知識や技術と比べて圧倒的な自由度を誇る。
君の生み出した『反罪術式』を例に挙げよう、あれは魔法抜きで考えて破格だ。
あれを可能にする自由度を見せてやれ。」
つまらないものを見て自由な考えができるほど、人間はできた生き物ではない。
私の元々の知識も、今目の前に在る人々も、だ。
「であれば、それに相応しいものを見せてやるのだって、家庭教師の仕事だ。
クソガキに見せてやるといい、魔法という自由を。
何かを作るということは、何かを壊すことから始まる。」
壊すだけで、そこで終わるものも、世の中にはあるがね。
「では、自由に振舞ってみましょう。」
動きが変わった。
「こんな風に、使ってみましょう。」
『地形操作』
地面が割れる。
「なに……?」
変化に恐怖したクソガキの動きが止まる。狙い通りだ。
そこから飛び出したのは礫……ではあるが、その形状は礫というにはあまりにも整っていた。
クソガキの首筋に直撃して砕ける、衝撃で体幹が揺らぐ。
「ちょ、なんでこんなものを……」
クソガキの表情がギョッとしたそれに変わる。
それを起こした正体は、回転させた弾丸状の岩であった。
「土の中には鉱物が、鉱物を固めれば金属塊が、それを成型すればこのように、弾丸もどきが作れます。
射程距離は短く、精度も低い。おまけに弾丸の速度も遅いので、虚仮脅しにしかなりませんがね。」
笑っていた。
「は…………?」
理解できないものを見た、という顔だ。
当初の構想イメージをぶち壊した結果後々泣く思いをするのはこちらなのですが?教授如何お考えですか?(魂の慟哭)
正直、予測不可能で楽しいのでありといえはありと思っていますがね。




