イメージは破壊と創造
午前の座学と基礎訓練は順調。
だが、相も変わらず午後の実践はボッコボコである。
というより、ここ数日は更に弱くなった。
総合的に判断すれば強くはなっている。先ず魔法に慣れた。魔法有りきの動き方に適応し始めた。
H.T.の補助が無くとも、今のクソガキなら魔法擬きを魔法だと言い張る痴態を晒さずに済む。
『身体強化』や『強度強化』は基礎訓練の結果が出て順調に精度が上がっている。
元の魔力量が多いというのは十分な武器。精度がお粗末故に脅威度は低かったが……
「当たれ!」
『身体強化』+『強度強化』
先ずは徒手空拳。
相も変わらず動きは素人丸出しのそれだが、速度が上がった。そして無駄が無くなった。
『身体強化』の速さに対応した動きを考えられるようになった。
『強度強化』の強度に対応した動きを作れるようになった。
己の持ち味を活かせるようになりつつある。
「動きが精緻になりましたね。基礎訓練の結果が出ているようで何よりです。」
「そう!言いながら!全部避けてるの!嫌味だろ!」
イヤミが嫌なら一回でも当ててみせろという話だ。
「実を言いますと、かなりギリギリなのですがね……。」
「一種類の魔法で対応できる限界だろう。次は2種類、3種類……全種類、魔法以外も全て使った総力戦……先はまだまだ長い。」
「そうですね……長い道のりです。一歩ずつ進んでいきましょう。」
それは一体、誰に向けられた言葉なのやら……
さて、問題はここからだ。
先ずは徒手空拳。そして次は魔法戦闘の方だ。こちらが問題なのだ。
『地形操作』
パキパキと地面がヒビ割れ、そこから手のひらに収まる程度の大きさの石が飛び出す。
石は上空2mに飛び上がり、重力に逆らい切れずに捕まり、地面に囚われる。
弧を描く軌道、温い速度、殺傷力どころか牽制にもならない。
ここ数日、クソガキはこう言った一見すると意図不明な魔法を何度も使っている。そして、決まってその後は腹立たしいとばかりに顔を顰める。
「いやはや、何を企んでいるのやら?」
「教授、予想はできているのでしょう?」
「いや、予想はしていない。予測して、確信している。」
みみっちいプライドが邪魔をしてモリアーティー先生にやり方を教われずにいるクソガキの考えを見透かす程度、清流の水底を望むより容易だ。
「私は、大方の予想はできますが、理想の形がわかりません。」
「だから教えるのを躊躇っていると。」
「他者のイメージに必要以上に介入すると、当人のイメージを壊してしまう恐れがあると聞いたので……」
遠慮、躊躇、僅かな恐怖。それに対する私の答えはたった一つだ。
「良いじゃないか、壊せば。」




