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座学→実践 勉強の日々

 《翌日》


 「『身体強化』+『強度強化』!」

 クソガキが徒手空拳での戦いに持ち込む。

 こちらが一度に使用する魔法を一種類に絞っているということまでは未だ気付いていない。

 だが現状、制限したシェリー君とクソガキを純粋な出力で比べればクソガキが圧倒的に優勢だ。それは理解している。

 幾ら武術の心得があって、人の5人くらいなら数分で(くび)り殺せる様に教えたが、膂力と肉体の強度が上がれば梃子摺(てこず)る。

 「このっ、この、この!このっ!」

 腕を乱雑にぶん回す。『身体強化』で速度だけ上げたシェリー君がそれを次々躱していく。

 「武術というのは、便利なものです。人体の構造や動かし方について学べる上に運動やケガの防止にも繋がります。

 今のところ、魔法を最優先としていましたが、武術も取り入れて学ぶというのも有効な手段の一つですね……」

 「なんで、なんでだよ!なんで当たらないんだよ!」

 必死なクソガキと涼しい顔のシェリー君。だが、表情ほどシェリー君側に余裕は無い。実は綱渡りを糸でやっているようなものだ。

 「当たらない理由は私が貴方の動きを予測しているからです。私が貴方の拳に当たればまず無事では済みません。なので、当たらないように貴方の動きを予測して先手を取らせてもらっています。

 例えば、貴方は抑えている心算なのでしょう。しかし、無意識に右足を前に出そうとしているので、そうして右手で殴るフリをしても、左手で殴ろうとしていることが解ります。」

 下手なフェイントを仕掛けようとして出した不用意な左手首を掴み、本命の右手に押し付けるように叩きつける。

 「相手の次の動きが解れば、その動きを邪魔することも、あるいは利用することもできるようになります。」

 そうして今度は錯乱しながら突き出してきた右拳を掴み、足を払って地面に組み伏せる。

 「魔法でどれだけ強化しても人間の根本的な構造は変化しません。なので、この様に組み伏せてしまえば……動けなくなります。」

 あれよあれよという間に地を這うことになったクソガキ。暴れるが、動けない。

 そもそも力がまともに入らない。いくら魔法で強化したとて、それを十分に伝達できなければ御覧の通りだ。

 「近接格闘にかかわらず、注意深く観察すれば、見えないものも見えてくる場合があります。それは数秒先のことだけでなく、隠された事柄や本質も、です。今度は相手のことをよく観察して、考えて、動いてみましょう。」

 そう言って拘束を解いた。

 「しかし、近接戦闘という発想の転換はとても良いと思いました。魔法を習うとそちらが疎かになるという話は有名です。

 そして、私のように魔力の乏しい者は例外ですが、大規模な魔法を使い慣れていると至近距離での魔法の制御が難しくなると聞きます。

 今日はここまでです。質問が無ければ夕食まで休憩とします。」



 またも評価、頂きました!

 総合評価、8000台突入まで、あと少しになりました。

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