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絶えず自壊する泥人形

 地面から生える槍。

 押し流す水流。

 地面から生える槍。

 押し流す水流。

 地面から生える槍。

 押し流す水流。

 地面から生える槍。

 押し流す水流。

 地面の動きを見て、僅かにでも動けば水で押し流し、こちらの攻撃の起点を潰しに来ている。

 「ですが……」

 地面ばかり見ていては他が見えなくなる……と。

 泥の上を駆け抜けながらクソガキ周辺の地面から槍を生やそうとした。クソガキがすんでのところでそれに気付き、雑に周辺一帯を洗い流す。

 『地形操作』

 目の前に鋭角に折った壁を作成。水の流れを割って凌ぐ。だが壁は水に流されドロドロになっている。

 追撃が来るかと見やれば、警戒したクソガキの顔がそこにはあった。

 「来ないのですか?」

 崩れ落ちる壁。二人の間は5.12m。徒手空拳や剣術ではなく魔法の間合いだ。

 「何か、隠してるだろ。」

 辺りを見回す。だが探しているものに焦点が合うことはない。

 「何をですか?」

 敢えてわざとらしく微笑んで見せる。

 「とぼけるなよ。朝言ってただろ、こうすれば魔法が上手く使えなくなるって!」

 魔法はイメージが重要。だから干渉するイメージと干渉する対象の間に解離があれば

魔法は機能不全を起こしてまともに発動しない。

 『水を多く含んだ泥を操り山を作る』というイメージで『砂』に『地形操作』を行って山を作ろうとしてもうまくいかない。砂は泥の様に上手く積みあがらないのだから。


 土で槍を作る場合、粘土の様な柔軟性は大事だが、それを硬質化させる関係である程度の強度も必要になる。

 泥で幾ら鋭利な槍を作ったとて、だ。槍の穂先が刺さる前に潰れる。

 どころか空気抵抗で潰れる。

 「それを教えたやつがそのままやられるわけない!お前、強いんだろ!」

 真夜中の大立ち回りを見ていたクソガキはそれを覚えていた。

 ある意味信頼していると言っても良い。

 そして、その信頼が生み出した見立ては大当たりだ。

 クソガキの魔力量は膨大だ。

 シェリー君と比較しても、同年代と比較しても、どころか大人と比較しても勝るほどに。

 そんな魔力量の膨大で、魔力の操作が未だ稚拙で、考えも足りないクソガキだったから、必要以上に周辺一帯を水浸しにしてしまった。

 「私を買いかぶりすぎです。そして、高評価とは別の理由で、素直にお礼をお伝えしておきます。

 感謝しますよ、私の魔力量ではここまで散水することはできませんでしたから。」

 『地形操作』

 『地形操作』の魔法は赤土だろうと砂だろうと、ある程度その性質を理解していれば干渉することができる。

 たとえそこが泥であろうと、それを泥と認識すれば、操れるのだ。


 地面の泥がせり上がる。

 大きく

 大きく

 大きく

 人よりも大きくなっていく

 大きな一つの塊が形を成していく

 それに足は必要ない

 二足で歩く必要がないから

 それに手は必要だ

 殴り掴み砕き飲み込むためのものが必要だから

 それに頭は必要だ

 頭があることでそれを人の形だと認識させるために必要だ


 「なんだよ、これ………」

 シェリー君とクソガキの前にそびえ立つそれに名前があるとすれば……

 「『絶えず自壊す(マッド・)る泥の人形(ゴーレム)』とでも名付けましょうか。

 魔道具の一種を『地形操作』のみで再現してみました。

 さぁ、始めましょうか。」

 『地形操作』

 クソガキが乾いた地面から早した槍で泥人形の胸を突き刺す。

 だが残念、心臓は無い。『EMETH』なんて呪文も無い。そして半端に壊しても意味が無い。

 貫かれた胸の泥は地面へと散らばり、しかしそれは泥人形の根元から吸い上げられて再度胸の穴へと吸い込まれて、あっという間に元通り。

 「頑張ってくださいね。」

 「ふ・ざ・け・ん・な・ッ・!・!」


 この泥人形の必殺技は上から相手を泥の質量で圧死or溺死させるというもの。

 ちなみに技名は『泥棺』。


 何をとは言いませんが、友人は完全詠唱出来るそうです。ちなみに千手皎天汰炮も一時期詠唱できたとか。

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