勤勉もいいけれど楽しむことも忘れずに
「かっこいい魔法を、使いたい。」
直接叩き付けられた。
「モンテル様……」
オドメイドはその発言を諌めようと間に入ろうとした。
「良いでしょう。では、準備をします。」
シェリー君が背を向けて裏庭へと向かう。
話はこれで終わった。
「え?」
「へ?」
予想外の発言に二人が固まった。
「魔法を行使する場合、特に慣れていない魔法を試射する場合は暴発の際の乱反射や二次被害防止のため屋外で行います。
これはどの教科書にも1番初めの頁に書かれている鉄則なので、覚えておいてください。
さぁ、行きましょう。」
「今から魔法を実際に使ってみましょう。」
「待ってください。」
「待てよ!」
おや、折角の魔法行使の良い機会だというのに、待てというのかね?
「はい、速かったのでカテナさん、先に言ってください。」
指名されて驚き、少し間があったが、気を取り直して口を開く。
「昨日は紐を使った練習を行いました。」
「そうでしたね。」
「半日だけです。」
「それが練習できる最大限の時間でした。」
「たった半日で、使うのは、危なくはないのですか?他の先生方はもっと段階を踏んでいました。」
魔法の怖さを知っている人間の発言だ。だが、知っているのは怖さだけだ。
「確かに、基本的には昨日の練習をもっと行い、その上で徐々に魔法を使えるようにしていく。
それが一般的です。」
大半の教科書や教師が座学→基礎的な魔力操作→魔法という順番で行っている。
「しかし、魔力というものを知り、魔法というものに多く触れ、魔力の扱い方や理論を同時に学び、イメージを強化するという手法もあります。」
魔法は理屈の存在する学問だ。
他の学問同様、基本や理論は重要な要素。だが、同時に感性やイメージというものが大きな意味を持つ。
土台だけを見ていては、その上に建つ建造物をイメージできない。
建造物をイメージできなければ、その建造物を支える最適な土台を造ることはできない。
土台と建造物の両方を理解して初めて完成する。
そして、もう一つ重要な意味がある。
「退屈な基礎訓練だけというのは味気が無い、この手のクソガキは注意力が欠けてあっという間に飽きる。」
そうでなくとも、魔力量が乏しい分を努力で補わんとして毎日の様に訓練し、あそこまで到達することは苦行と同義だ。
「適度に完成形を見せて、モチベーションを上げるというのは大事だ。
楽しいと思わせることができれば、自分から勝手に学び出す。これほど楽なことはない。」
ちなみに、今の今までこの手のモチベーションで釣るやり方を使わなかった理由はただ一つ。
需要がなかった、だから使えなかった。
評価ありがとうございます。そして同時にランクインのご報告もいたします。PVも久々に5000を超えました。
夏の暑さに良く効きます。ありがとうございます。皆様も倒れないように気を付けてください。




