心の狙撃と無自覚な正解への到達
洗練された技術は門外漢にも素晴らしいという感動を与える。
光剣の陽動と注目、耳元での爆音、そして最後の光。
研ぎ澄まされた動きは流れるように無駄なく美しく見えた。
闇夜に光る剣閃は塀の向こうにいる子どもの目にも届いた。
それを子どもはこう評する。
「カッコいい……」
認めるべきではない相手の振る舞い。けれど、その心の浪漫は否定できない。
否定すべきだ。けれどカッコいいものはどうにもならない。
シェリー=モリアーティーが行った狙撃は見事モンテル=ゴードンの心を穿った。
「坊ちゃん。」
窓の外に熱中していたせいで気付かなかった。
「わかってるよ、ただ目が冴えて、少し歩きたかっただけだよ、お休み。」
「お休みなさい。」
急いで振り返って、部屋に戻る。
今日これから見る夢は多分面白いものになるだろうという予感を胸にベッドへ向かった。
クソガキは部屋に戻っていった。あの表情だ、明日の授業態度は今日より少しはマシになる。
「大丈夫か?」
コックが手元の2人を担いでこちらに駆け寄ってくる。人間2人を小麦粉の袋感覚で担いでいる……。
「はい、皆さん無事眠って下さいました。」
「シェリー君、そういうことではないのだよ。」
「そういうことじゃない。お嬢さんにケガが無いか聞いてるんだ。」
「まったくありません。ご心配ありがとうございます。」
「そうか、良かった。すまない、少し言い方が乱暴だった。」
「いいえ、心配していただきありがとうございます。」
倒れそうな2人を静かに地面に寝かしつける。気丈に振る舞っているだとか、虚勢を張っているだとか、そういうことは一切ない。
音と光で硬直した隙にあの術式で全員を一部破壊して作り直した。
自業自得で血塗れになり、胴体が観音開きになっていたこの前の愚か者に対して行った臓器レベルでの『再構築』ほど面倒ではなかった。
だが先程行ったコックへの解毒、『解析』に重きが置かれていた術式行使よりは面倒だった。
消耗はしているが、明日……もう今日だな、今日の家庭教師の務めに影響するほどではない。
シェリー君が作った『反罪術式』の最適化が行われている。
作ったのはシェリー君で、使ったことがあるのはシェリー君だけ。理論上使えるが、私は使ったことが無いし、手を入れるようなマネもしていない。
シェリー君が使っている中で術式の無駄を省き、必要なことだけを行使するようになった。
何が必要で何が不要か。
それが考えられるなら、それに気付けたら、成るのは時間の問題。
本日は早目投稿です。




