表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1624/1781

社会科見学の授業

 極僅かな発砲音。その後音速でやって来る飛来物。

 「奇妙ですね………………」

 弾丸を盾で流しながら徐々に徐々に距離を詰めていく。



 (奇妙だな)

 先程から撃ち込んでいるのは特殊な弾丸。

 貫通力を上げて相手の肉の中に撃ち込み、それを検知すると弾が抜ける前に弾丸内部の術式が爆ぜて有毒な弾丸の破片が爆破と共に体内にばらまかれる。

 完全なる摘出は不可能。末端でも命中さえすれば毒は拡がり、短期的、長期的に見て甚大な被害を与える。

 故に、弾丸そのものの性質は『貫くこと』に特化している。

 鎧だろうが、盾だろうが、自慢の肉体だろうが、貫ける。

 だがあの黒い盾は不意撃ちの時、正面から弾を弾き返していた。

 今も受け流す動きで弾きながら距離を詰めている。

 (軽々振り回している、やたらと軽そうだ。しかも振り回している時に見えたが、盾なのに異様に薄い。

 それでも弾を流しているから相当頑丈だ。)

 未知の盾とその使い手の冷静さに静かに拍手をしながら、それでも仕留める方法を模索する。

 (連続で同じ場所に当てて強引に貫く?

 ダメだ、弾を流されている今、それをやっても警戒させるだけだ。

 盾の隙間を狙って本人狙い?

 今もやっているが冷静に対処されているのが現実だ。)

 家庭教師と名乗っていたが、一体ここの家のガキは何を習っているんだ?殺しか?世界征服か?魔王なのか?

 (いや、落ち着こう……軽くて頑丈な盾を持っている。貫通は無理。盾を使われて当てる隙も無い。

 それはつまり、当たっては不味いということだ。)

 命中させれば、こちらに戦況が傾く。

 なら、一か八かだ。

 銃身を固定して、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ……




 シェリー君が慣れない盾を使って捌いていく。

 弾いた弾丸の形状を見て気付いた。

 「殺傷力より貫通力重視。だが、その弾丸の表面には空気抵抗の軽減目的やライフルマークとは違う形状の溝。

 内側から力を加えて破裂させる為にある様な、丁度そんな形の溝だ。」

 強度強化で油断したところで貫通。体内で破裂させて内側から破壊する……ありきたりだな。手垢が付き過ぎて塊の様になっている。

 「時に、暴力の危険性を知るために暴力について教えることも必要かもしれません。

 しかし、これは見せたくありませんね!」

 確実に一発一発を弾いていく。虎殺しと呼ばれる程の使い手でも無い限り、居場所の割れた狙撃手なぞ、恐るるに足らない。




 疲労困憊。だからあっという間に眠りに落ちていた。

 だから、喉が少し乾いていたのに水を飲まずに眠りに落ちた。

 水差しはあった。だけど『水』という気分じゃなかった。

 だから、部屋から出て、何となく月を見てぼうっとしていた。

 見えたのは偶然だった。ちらりとだけ、ほんの少し、気になった。

 だから、見た。始めは少し、何があったのかと気になっただけだった。

 いつの間にか、それから目が離せなくなった。




 モリアーティーの短編版、ランクイン!何故本編ではないのか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ