教授から見た『親子丼』のネーミングについて
丼の蓋を取ると、蒸気と共に香りが広がり、白い湯気が晴れると料理の全体像が露になった。
蓋には遮熱効果だけでなく、嗅覚・視覚的演出効果をもたらしていた。これは手の込んだ仕掛けに見える。
「これは、玉子か。」
「……美味しそうね。」
「綺麗、とても、綺麗です。」
三者三様の称賛。
丼の中身は艶やかな黄金。
その上に彩りの葱が載り、2色でありながら効果的な効果は絶大だ。
「出汁で煮た鶏肉と野菜の上から溶いた鶏卵をかけて固まり切らないように加熱、それをコメにかけて最後に葱を散らした逸品。
その名を『親子丼』と言います。どうぞ、冷めない内にお召し上がりください。」
狂気に満ちた殺人鬼の様なネーミングセンスだな。
『鶏の親子をバラバラにした後で調理して一緒にしました。親子を一緒にして食べるから名前は親子丼です。』
発想が完全に新聞を賑わす系統の殺人鬼のそれなのだよ。
大きくカットされた鶏肉は表面が軽く炙られ、噛むほどに香ばしい香り、肉汁、出汁の旨味が口に広がる。
それが濃厚な玉子と絡み合い、ネギの食感や香りと一体となり、最後にコメが合わさって一つに集約する。
美味だ、非常に、美味だ。
「異国の料理と聞いたから、戸惑うと思ったけれど……」
「……そんなことは、ありませんね。」
「レシピは聞いたことがありましたが、味わうのは初めてです。こんなにおいしいものだとは……」
皆、驚愕と共に賞賛代わりに食べる、食べる、食べる。
一つで完結するこの丼というものが功を奏した。一通り食べ終え、落ち着いた三人はやっと会話に入ることが出来た。
「本日は、カテナさんも加えて魔法の基礎訓練、魔力の認識と制御訓練を行いました。」
表情は平静を装っているが、内心穏やかでないことは端々から見て取れる。
「それで、どうでしたか?」
「明日から本格的に魔法を教えようと思っています。
生来膨大な魔力を持っていると、魔力の制御が魔力量に追い付かずに苦労する……というお話を聞いていました。」
「…………えぇ、有名な話ね。」
「彼が鍛練を続けていけば、その心配は無くなるでしょう。
どころか、5年後には同年代で一番の使い手になる可能性もあります。」
シェリー君はお世辞やおべっかが苦手だ。
あのクソガキ、魔法もどきを魔法と宣っていたが、あのもどきは本来起こらない現象だ。
本来、魔力を魔法に変える……つまり特定の形に変換する際、一定の変換効率を下回ると魔法は不発する。
大気中にある中立の魔力の干渉によって魔力が霧散するからだ。
あのもどきをやるには、膨大な力が必要になる。
魔力の量だけで見れば、クソガキは魔法の適正がある。
「楽しみにして、見守ってあげて下さい。」
口角が上がった理由は、料理の味だけではなかった。
遅れて申し訳ありません。
ちょっと聖杯戦争に参加して、期待の大型新人量子女子で遊んでしまいました。
強い、楽しい、花火ちゃんが大活躍!最高です。
…………反省します。




