手を取る。次を掴む。
観察する時間はあった。
どころか体感することも出来た。
相手の形を意識する。
目で見える形を、目では見えない流れを捉える。
よく知った自分の形を、流れを、イメージする。
バラバラな3つのそれを、繋げて1つにする。
「っ!」
大河が流れ込んでくる。
激流が押し流そうとする。
それに呑まれないように、集中する。
どれだけ大きくてもそれは力。なら、向きを変えるくらい、動き方を変えるくらいなら…………
大河を、激流を、掌握する。
そして、ここで終わらせない。
大河に波を。
激流に凪を。
作って、それを送り出す!
強過ぎれば傷付ける。
弱過ぎれば意味がない。
それが大きな変化だと気付くように、自分の力の形が解るように。
届いて、そして気付いて!
握った両手から無言で反応が返ってきた。
未知の感覚を驚き恐れ戸惑っている。
けれど心配しないで、これはあなたが最初から持っているもの。
あなたのもの、あなたの力、あなたが使うためにあるもの。
恐れずに、どうぞ使ってください。私はそのために力を貸しましょう。
「なんだよ、なんだよ今の……」
「今のは、なんですか?」
シェリー君の魔力を2人に流し込んで半ば強引に2人の魔力を動かした。
手足があってもそれを知覚出来なければ、それが自分のものだと解らなければ動かしようがない。
だから、先ずは実際に動かしてその時の感覚で力を知覚させる。手足を認識させる。
実際に動かす段階になったらこんな荒療治じみたことは出来ないが、これでスタートラインには立てる。
「もう一度、試してみてください。」
息を整えて、促す。
今行った手法は人の体内で魔法を発動させる様な無茶苦茶な難易度ではない。だが、一度相手の魔力を取り込んで干渉する関係上、消耗する方法に違いはない。
このクソガキに関しては特にそうだ。
後々、特別教育が必要になる。
パキポキと折れる音が聞こえる。
何度も何度も、折れて分銅が落ちる。
「出来ました、出来ました!」
「良かったじゃん、カテナ。」
「モンテル様もですよ!私達、出来るようになっています!」
オドメイドの反応はクソガキにも伝播し、教える上で良い刺激になっている。
先程まで紐の形を留めることすら困難だった2人。その2人が今、紐を棒状にして、分銅を吊ろうと躍起になっている。
今は未だ、分銅を支えることが出来ないが、この段階に来れば、あとは時間の問題だ。
「大成功と言って問題はないだろう。どうだね、人が一つずつ『可能』を増やしていく瞬間に立ち会った気分は?」
「感無量です。」
「『可能』を増やした時、シェリー君は何を得たかね?」
「『課題』です。それらに気付けました。」
「それは良かった。」
「……はい。」
ブックマークが徐々に増えている。ありがとうございます。
皆様、暑いのでどうかお体に気を付けてお過ごしください。私は既にこの暑さにやられました。




