礎の上に立ち、手を取って。
教授の言いたいことは、解っています。
理論も理屈も解っています。
そして、自分のやっていることは、最適解から程遠いことも解っています。
私は意図的にそれを避けようと、出来ればやらずに終えたいと思っています。
けれど、それは私の個人的な事情で、目の前の教え子には何ら関係無いこと。それは解っています。
ただ、私には自信がありません。信じられません。信じたくもありません。
形と方法は違えど根幹は同じ、それを他者に施す。それを許せないのです。
それをしようとすると、腕に、足に、楔が打ち込まれるのです。
「くそ!」
「モンテル様、落ち着いて下さい。先程よりずっと良くなりましたよ。」
苛立ちがあり、困惑があり、声援があり、そして投げ出さずに今も努力をする2人。
そんな2人に対して、私がすべきことは、なんでしょう?
解っています。
解っているのです。
けれど私が2人を傷つけない保証はどこにも……
「君が開発したあの術式。
私の破壊へのアプローチを利用してそのまま再生へ繋げる術式だ。
あれは1度対象を徹底的に破壊し尽くして、その後組み立て治すという術式。
破壊に躊躇するのは今更だよ。
それに、あの術式は人に魔力の流れを知覚させるよりもずっと難易度が高い。
高度な技法を散々使いこなしておきながら今更簡単な技法を使うか否か迷っている人物がいるとしたら、私には意味が解らないね。
『失敗すれば死ぬ、うまく行っても死ぬときは死ぬ。』
そんな修羅場よりずっと気楽だ。
漠然と自分が信じられないなら、身近な他者の言葉を思い出すといい。
事実と実績を数字にして考えるといい。
それなら信じざるを得ない。そうだろう?」
それを聞いて思い出される言葉は、悪意と憎悪と怨嗟。
魔法と一緒に刻まれた痛み。苦しくて辛くて痛くて消えたくて……
それだけでした。私はだから出来ない。そう信じていました。そう信じざるを得ませんでした。
今までは。
今の私には認めてくれる人が、います。こんな小娘に敬意を払い、笑いかけ、思いやってくれる人達。
過酷も過酷、絶え間無い激動と共に積み上げられたそれを私は疎ましく思いません。
その人達は、私を信じてくれます。私はそれに応えるべく、積み上げてきました。
その上で自分に問うてみましょう、出来るか、出来ないか?
「出来ます。」
「できない!」
「難しいですね……」
モンテルとカテナは壁にぶつかっていた。
2人とも魔力というものをまともに認識出来ていない。
イメージして、日常的に放出されている魔力がそれに引っ張られ、形状を変えているだけ。魔法とは程遠いお粗末なものだ。
けれど、イメージは着実に固まっている。ここで手を取り魔力というものを教える者が現れたら、成長曲線は鈍角を描く。
「お2人とも、力を抜いて下さい。」
2人の手を取る者が現れた。
久々に使いたくなりました。
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そして、ここまで読んで下さる読者の方々に感謝を。




