教授の罠
次の授業前、教室でシェリー=モリアーティーは何食わぬ顔で授業準備をしていた。
まぁ、動揺が出そうなので落ち着く迄は私が替わりを務めているのだがね。
三人組は予想通り全く来ない。
「大丈夫でしょうか?」
不安そうな声で問いかける。
「心配し過ぎだ、シェリー君。
君も聞いただろう?階下から聞こえて来た娘(小)の悲鳴染みた声を。
間違いなく私が陥れた相手は娘(小)だ。」
「いえ、そうでは無くて!
大丈夫でしょうか⁉確実にバレませんか?バレてませんか?絶対にバレていますよね?」
まぁ、そうなるな。が、彼女は勘違いしている。
「あの単純な仕掛けを作って誰かを陥れようとした人間は誰かね?君かね?君があの仕掛けを作って娘(小)を泥水塗れにしたのかね?」
「…………いえ、違います。」
「ならば何も問題は無い。
証拠?指紋を採取できるならしたまえ、彼女らの指紋しか残っていない。
DNA?そんなものを残すほど愚かに見えたかね?
要は『あの娘(小)は自分の作った罠に自分で嵌っただけ。』という構図にしかならないから一切の問題にはならないという事だ。
たとえ周囲に喚き立てて事を荒立てても『何故そんな事をしたか?』と追及されるだけで相手の立場が悪くなるだけ。私達には問題は無い。
事件は事件として発見ないしは捜査されなければ問題にもならないのだよ。」
そう、例え私が法に触れる様な事をしても、事件自体の発覚や私が捜査線上に上がらなければ何も問題は無い。
私は新聞で事件が社会的に起きていない事を見て嗤うか、事件の捜査関係者が的外れな捜査をしているのを見て嗤うかのどちらか。
証拠が無ければ追求は出来ない。
「それは、解りました。」
シェリー君も一応の納得はしたようだが、未だ納得し切れていない部分がある。
「『証拠は無くても相手はお構いなしに手を出して来る。犯人は私であっても無くても報復されるかもしれない。』と考えているのだろう。」
「!……………………その通りです。その点はどうやって対策を取るのでしょうか?」
言う事を完全に先に言われて面喰っているシェリー君。
が、シェリー君は勘違いをしている。
「対策?そんな事はしない。」
「! ?…………⁉」
シェリー君、絶句。
「君は幾つか間違っている。
私は別に報復を回避しようとは考えていない。むしろその逆。
報復させるように仕向けたのだよ。
あの罠を返り討ちにした事で、あの三人は確証など無くとも君を徹底的に狙い撃ちに来る。
罠を仕掛けて来るだろう。陥れに来るだろう。貶めに来るだろう。
だからやったのさ。
これから行う自分達の悪行の愚かさを自分の身を以て知らせる為に………ね。
仕掛けは拙くとも私達を害する為に様々な事を仕掛けて来る。
それを使うのさ。
己の罠によって己が破滅するなんて……最も酷い破滅の仕方だと思わんかね?」
「……………………」
シェリー君が恐怖で息を飲むのが解る。
カーン カーン カーン カーン
授業開始の鐘が鳴り響いた。
申し訳有りません。忙しくて投稿が不安定になっています。
少しの間不安定になります。申し訳ありません。




