猛獣使い
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連載三カ月目。まだまだ続きます。
動け……動け!動け!!
何が起こったのか解らなかった。
目の前では手下共が蜘蛛の子を散らしたように逃げ惑っている。
熊の頭の上に餓鬼が乗った途端、熊が俺の言う事を聞かなくなった。
蛇をけしかけたのに、あと少しで牙が届く所までいったというのに、その牙を引っ込めた。
どころかこちらに牙を向けて来た。
蛇が尾をまるで槍の様に操り、刺し貫かんと襲い掛かる。熊は熊で背中に餓鬼を乗せて暴れ回る。しかも、振り落とすどころか餓鬼に刃が向かない様に警戒までしている。
どういう事だ?副作用で判断力は落ちている。支配は完全な筈だ。それが………どうして!
「この場から速やかに撤退して下さい。さもなくば、解りますね?」
穏やかに、冷静に、この状況下で笑みさえ浮かべている。
狂ってる!命の危機の状況下で、何故あんな猛獣の背に乗って笑っていられる⁉
矢張りあの餓鬼は餓鬼じゃない!餓鬼の皮を被った何かだ!
「お前ら!何してる⁉まず蛇と熊を仕留めろ!魔法だ。魔法を使え!」
髭面がもの凄い剣幕で怒鳴りつける。
蜘蛛の子が振り向いてその形相に怯えつつ、こちらへ向かって来る。
『火炎』
全方位から熊と蛇目掛けて火の玉が放たれる。
蜘蛛の子を散らしていたのが逆に功を奏して逃げ道が無くなる。とでも思ったのだろうな。
「燃えろ!エ˝あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
下品な笑いを撒き散らして火の玉が我々に向かって来る。
「魔法って、もう少し便利な物だと思っていたのですがね…………」
蛇が地面を尾で突き刺し、その下の泥で尾を覆う。
熊も前足を泥に突っ込んで準備万端。
蛇は火炎を尾で叩き落し、熊は前足で炎を切り裂く。
全方位から向かってきた炎は、二匹のまるで息を合わせているかのようなコンビネーションによって全て掻き消される。
「何でだよ!なんで従わねえんだ!!」
賊達は、炎が効かないと分かると今度は闇雲に武器を取って襲い掛かる。
「解りました。では、仕方ありません。」
餓鬼が静かに笑うと、熊と蛇が動き出す。
熊が前足を器用に使い、武器だけを叩き落す。叩き落された手下が熊の前足に抑え込まれて地面に組み伏せられる。
蛇が長い胴体を鞭の様に操り、武器を叩き落とし、賊を何人も胴体で縛り上げた。
矢張り操られている。偶然なんて事は無い。獣二体が炎を叩き落す前にワザワザ泥で前足や尾を覆った事といい、武器を狙って叩き落す動きといい、明らかに高度な思考に基づいて行動している。操られている!
一体どんな高度な魔法を使った?……………まぁ良い。
どうせこのガキが威張れるのはあと僅かなのだから。
やっと気付いたか。
あぁ、無論、この二匹は私が操っている。
大概の生物は電気信号で動いている。もし、電気を操る魔法を使って、外部からその信号を操作すれば……どうなるか解るかね?
あぁ、正解がこの状況だ。
蛇と熊に近付いた時に通電する蜘蛛の糸を体に張り付けて電気を流した。熊と蛇がどんな方法を使って操っていようと、肉体に直接干渉してしまえば妨害も相殺も出来る。向こうがたとえ妙な細工をしようとしても、こちらがそれを相殺できるからな。
さぁ、ではもう時間だ。
二匹が縮む前に降りてあげよう。
熊の背から飛び降り、蛇をこちらへと戻す。
そんな事をしている間に時間が来たのか、蛇と熊が縮んでいく。
自然界に居るとは思えない大きさの熊と蛇が標準サイズの、図鑑に載っているようなサイズに縮んでしまった。
今日中にもう一話投稿出来るか解りませんが、頑張ってみます。お待ちください。
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