予想外なぞ予想内。その程度で揺らぐ訳が無かろう?
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魔法。
ローブにトンガリ帽子の格好で箒にまたがり空を飛んで大鍋掻き回す魔女がチチンプイプイするあの魔法?
何の罪も無い、しかし邪魔な人間に対して免罪を与える為の『魔女』システムの産物かね?
オイオイオイ、流石に16にもなって魔法とは………………面白いことを言うものだね。
「……シェリー嬢?
魔法とは、何の形容だい?まさか人を日中だけ白鳥に変えるとか、南瓜を馬車に変えるとか、そう言う事を言っている訳ではあるまい?」
「………………。探せば有るのではないでしょうか?」
嘘が無い。
頭脳がそう訴えかける。
真偽を見破るなど、表情や体の動きや呼吸等の変数を観測出来れば容易い。
もう、反射でイケる。詐欺師なんて私の前では正直者と大差無い。嘘発見器なぞ発明する意味さえ無い。
つまり、彼女はこう言っている。
御伽噺の魔女や魔法使いの使う、荒唐無稽な幻想の技術が存在すると。
「シェリー嬢。その………魔法は何処で見えるかね?」
「?お見せしましょうか?」
!?
『火』
人差し指を立ててそう言った瞬間、指先から微かな火が出た。
指に油など塗られた形跡はない。袖に隠してあるガス管の細工の気配もない。
この私の前で種と仕掛けの存在する奇術が魔術には成り得ない。何と言っても嘘が私には通じないのだから。
つまりは………本当だ。今まさに目の前で魔法の実在が証明された。
成程。
頭痛がする。
私の知る世界には魔法は無かった。それを確認しようとして痛む。
「その、魔法で危害が加えられる。そう言う事で良いのかね?」
「えぇ、火をぶつけられたり、冬に私の部屋を凍らせたり、感電させられたり…………」
この部屋から出ると殺人鬼がうじゃうじゃ居るのかね?
全く、怖いね。殺人鬼だなんて。
一生会いたくない存在だ!
「…………成程。解った。
確認だ。この学園。後で歩かせて貰うが、ここに君の味方と呼べる存在はまともに存在しない。
虐めの方法は犯罪と言って差し支え……言わなければ差し支える内容。窃盗や暴行や器物損壊や殺人未遂や名誉棄損……………
しかも、魔法というモノを使う。話を聞く限り、その性質は無限に存在すると言って良いようだ。
間違いは有るかね?」
「……………ありません。
あの、モリアーティー教授?あなたは魔法を知らないのですか?
もし………知らない………………予想外だった…………………私には出来ない。というのであるなら……………言って下さい。
降りて下さっても、私は…構いません。」
シェリー嬢は半透明な私に不安を押し殺した不自然極まりない笑顔を向けた。
ふぅむ。私としたことが失態だ。大馬鹿者だ。能無しだ。
つい、魔法なんて言う素っ頓狂な言葉を聴いて驚いてしまったのは敗因だ。
こんなお嬢さんの目の前で天才モリアーティーともあろう者がなんて無様を晒したんだ。
「見くびって貰っては困るね。お嬢さん。
残念ながら私は魔法使いでは無い。
魔法なんてモノも知らない。」
私は笑い掛ける。
悲嘆にくれるシェリー嬢。
そう、私は魔法使いでは無い。
魔法なんてモノも知らない。
嘘はイカンよ。泥棒の始まりだ。
当り前だ。だから正直に言った。
私に魔法なんて使えない。
何故なら。
「私は偉大なる魔法使い。
火や水を吹く程度の陳腐な小業なんて知らないさ。
当然だろう?偉大なる魔法使いは、世界を意のままに、操ることが出来るのだから。」
自信たっぷりに笑いかける。
顔が少し晴れた。
嘘は言っちゃいない。これが嘘ならすぐバレるし、そんな嘘。私は吐かない。
泥棒の始まりと言ったが、吐かない。とは一言も言っておらんよ、私は。
しかし、これは本当だ。
世界を意のままに操る。その程度。造作もない。
世界が出来るなら学園の小娘や教師程度。問題にもならない。
魔法?予測不可能?未知?
待ちたまえ。私は驚きはした。が、別に『計算外だぁ~!』なんて間抜けな事を言った覚えはない。
一変数が加わった所で私の計算は崩壊しない。
この程度。問題にさえならんよ。
君達には後ほど見せてあげよう。
モリアーティーの紡ぎ出す、美しき完全犯罪の方程式を。
評価も頂き、ブクマが『癖のヤバイ魔剣』に届こうとする本作。
著者が言うのも何ですが、どういう事⁉




