夏休み後半前半部 完!
長きに渡る200名の賊VSシェリー君の闘いが終わります。
『粉塵爆発』
燃えやすい物体や有機物の粉塵が空気中に撒かれて酸素と触れやすい状態、燃焼しやすい状態の時、火をつける事で酸素と粉塵が反応して熱を発生させる。
更にその熱が周囲の粉塵に働きかけて同じ反応が起きて熱を撒き散らし、その周囲でも撒き散らされた熱が…………と連鎖的に一気に反応する事で爆発を発生させる化学反応。
何の特別な仕掛けもない小麦粉を、人を焼き殺す燃焼性ガスに変えるこの科学には幾つか発動条件が有る。
1.空気が乾燥している事。
さっきから指揮官がそこら中に火を撒き散らしてくれたおかげで空気はカラカラだ。
2.粉自体も乾燥している事
問題無い。木粉は十分乾燥させて燃えるようになっている。
3.粉の空気中の濃度
濃度が一定値にないと爆発は起きない。なのである程度木粉が拡散するタイミングで木箱を破壊し、その上でこちらからも確実に引火する様に空気の流れを弄らせてもらった。
と、言う訳で、空気中に撒き散らされた木粉に、指揮官に咄嗟の判断で引火をするように仕向け、爆発。
魔法の風で自分を予め爆風から引き離しておいたシェリー君以外は上空からの熱波や光のショックで全員が目を回していた。
シェリー君が意図的に上空で爆発を引き起こした事で、被害は最小限。目を回した輩は居るが死者は居ない。
あぁ、勘違いしないでくれたまえ、粉塵爆発は本来、死者が出る規模の大爆発だ。
小麦粉を大量殺人の凶器に変えるし、台所を陰惨な殺人や痛ましい事故現場に変える事が出来てしまう。
ふざけ半分にやって良い事では無い。
決して、真似をしない様に。
シェリー君はそれなりに高度な計算に基づいて上空で爆発を引き起こす事で殺傷力を下げていたからこの程度で済んでいる。
教授という専門家の監修の元、安全性に考慮して行っている。
自分もやってみよう等という自惚れた真似をすれば洒落や火傷では済まないからそのつもりで、肝に命じてくれたまえ。
「大丈夫…………ですよね。」
自分も爆発の衝撃で若干腰を抜かしながら賊を心配する。
「泥にまみれてある程度火傷はし辛くなっている。そもそも爆心地との物理的距離が有って被害は小さい。
いきなり強い光と爆炎を目の前で炸裂させられて驚いているだけだ。当分の間、トラウマで素敵な夢が見られない程度で済むさ。」
「そうですか!」
ホッとしながら息を吐いてその場に座り込む。
今、200人の賊が少女の計略策略謀略奸計の前に沈んだ。
こうして、シェリー君の長く、短い、夏休みの試練は終わった。
夏休みの残り時間は、シェリー君の村の復興と、ジヘンの村の復興に費やされた。
全く、シェリー君というものは………自分の村だけでなく他人の、しかも、人を殺せと言った輩の村まで助けようとは………………まぁ、嫌いでは無いが………ね。
こうして、夏休みはあっという間に過ぎて行った。
ダッダッダッダッダッダ!
地面から響く音で現実に引き戻された。
シェリー君の目の前には気絶した賊共。他には誰も居ない。
音の正体は何処か?
「‼」
『暴風!!!』
シェリー君が暴風の衝撃で吹き飛ぶ。
シェリー君が咄嗟に使った魔法で自身が吹き飛び、背中を木に叩き付けた。
自爆?あぁ、本来ならその評価は正しい。が、今回に限ってそれはシェリー君に出来る最適解の一つだった。
もし、シェリー君が自分を吹き飛ばさなかったら、シェリー君の頭部は輪切りにされていただろうからね。
200名との闘いは終わりましたよ。はい。終わりましたとも。
皆さん、忘れていませんか?賊の総人数を、回収されていない伏線的なものを。
3~4章の復習を今のうちにお勧めします。特に3章の猛獣あたり、4章の村に来る前、教授の戦力の分析辺りを探して読むことを特にお勧めします。




