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未来の黒幕系悪役令嬢モリアーティーの異世界完全犯罪白書  作者: 黒銘菓
シェリー君の帰省と(夏休み後編)
122/1781

集団逃走4

もうそろそろ逃走劇も終わりです。

入り口が近づいてくる。

しかし、村人達と賊共の距離も近付いてきてしまっている。

最後尾と賊の最前列の距離、残り30m程度。

出口まで逃げ切れるかと聞かれたらこう答えよう。

まともに(・・・・)逃げていたら(・・・・・・)ギリギリで追いつかれる。』と。

ならば、まともで無い方法でならどうだろうか?

魔法を使う?無理だな。この消耗度合いからして、この場所でさっきの様な魔法を使ってしまっては逃げ切る事は事実上不可能になる。

モリアーティー式拳闘術は如何か?無理だな。シェリー君のレベルでは、『一対一でかつ、こちらが相手に触れる事が出来るのであれば、相手が剣を持っていようが、拳銃を持っていようが、魔法の力を使おうが確実に眠らせる事が出来る。』という事までが可能なライン。この人数、多対一でかつ、多人数を守りながらの闘いを凌げるような技能には未だほど遠い。

では、如何するか?

答えはここ、あのタイルの廊下にある。

24の不規則で意味の無いタイルが足元に広がる。

ここは他の場所に比べて廊下の幅が広い。

「皆さん!横に広がって!タイルは無視して進んで下さい!」

シェリー君が叫ぶ。

それを聞いた村人が廊下の幅いっぱいに広がって走り始める。

「オイ見張り!!そいつら逃がすんじゃねぇぞ!!」

「仕掛けだ!天井を落とせ!!」

後ろから賊共も叫ぶ。

見張りがそれに気づいて前かがみになる。

仕掛けを作動させるつもりだ。

村人全員廊下のど真ん中。仕掛けを使われては全員まとめて串刺し確定。

どうするかね?

「シェリー君?」

余計なお世話お節介とも思ったが声を掛ける。

返答は行動で示してくれた。


『電流』


電撃がシェリー君の指先で輝く。

狙いは見張りの頭。電気ショックで気絶させる気だ。

だが、この狙い方では危うい。

このまま当たれば電撃が脳に直撃し、気絶するにはする………が、相手は気絶の弾みで吊り天井を落として私達は皆仲良く串刺し確定だ。

仕方無い。

「座標修正。(-269,427,72)」

一言だけ、シェリー君に囁く。

その一言が囁かれると同時に、シェリー君の指先が僅かに動く。


ビシィィ!


指先から光が走り、見張りの頭目掛けて電撃が撃ち込まれた。

見張りが一瞬痙攣し、眠った様に机に突っ伏した。

成功だ。

「有り難う御座います。」

「礼は良い。早く皆を逃がすんだ。」

コクリと首を振って駆け出す。

あぁ、さっき言った三つの数の事かね?(左右,前後,高さ)。左右、前後、高さの三変数をcmで表す事で特定の三次元の座標を示す手法さ。

cm単位で精密なコントロールをしなければならないので、面倒な事この上無いが、シェリー君の体を使わずとも的確にアドバイスが出来る様になる。

次はmm単位でのアドバイスにシェリー君が対応出来るようになれば良し。

最終的には……………どこまで可能かな?





「ハッ!」

「何だ………ゴォ⁉」

騒ぎを聞きつけた暗幕の向こう側の見張りを拳闘術で気絶させる。

さぁて、気絶している間に村人全員は無事、タイルの廊下を抜けた。

ノコノコやって来る賊は、未だタイルの廊下の前に居る。

さぁて……


ガコン


気絶した見張りの足元。大きな金属製のレバーを力一杯引いた。



ギャリギャリギャリギャリギャリ


ガチャン!!



轟音と共にカラフルなタイルが一色になった。

違うな。吊り天井の仕掛けが作動し、吊り天井が床目掛けて落下してきた。

「アブねぇ!」「にげろにげろ!……オァァぁぁぁぁぁ!」「痛ぇぇ!」「だぁ!!!いきなり後ろに下がんな!」

吊り天井の向こう側から怒号と悲鳴のカクテルが聞こえた。

さぁて、逃亡の仕上げと行こう。


一応、忘れがちかもしれませんが、ここってファンタジー世界なんですよね。

スライムとか、ドラゴンも居るんです。

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