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未来の黒幕系悪役令嬢モリアーティーの異世界完全犯罪白書  作者: 黒銘菓
シェリー君の帰省と(夏休み後編)
102/1781

悲愴な帰省

夏休み後編、開始です。

三人組と別れた後、人の気配の無い道を歩いて数時間、シェリー君と私は熊を荷物に乗せて、小高い丘を登っていた。

周囲に草木が生えている。…………………が、あまり茂っているとは言い難い。

あちこちの草木が所々に萎れ、枯れ、木々に至ってはへし折られた様な残骸が幾つも転がっている様に見えた。

その折れた木も、『生木が折れた。』というよりは、『枯れ木がへし折られた。』というのが近いだろう。

シェリー君の故郷が栄えていないのは目に見えていた。が、相当酷いのが見て取れる。

一言で言えば荒れている。

曇り模様になってきた空がその状況を更に悪く見せる。

この先に黄金と真珠の国が有ったり、豊穣の国や御伽噺の夢の国が有ったり、理想郷や桃源郷が有る。という事は私だけでなく、この光景を見た誰もが期待できない。

道中には猛獣や賊、今見える光景はご覧の通り、誰がどう考えてもこの先に見える光景は…………



「………………これは………………………………」

丘の上に到着したシェリー君が沈黙した。

シェリー君の故郷なのだろうが、シェリー君の知る故郷と比べて今の状況が圧倒的に酷い事が今の一言で解るだろう。

丘から見えた光景は一面広がる湿地沼地。しかし、あちこちに在る水溜まりは泥で濁り、汚れ、太い木々が折れて浮かび上がっている。水溜まりというよりも泥溜まり、ヘドロ溜まりというのが近い。

土の地面よりも湿地や沼や池の方が圧倒的に多い。無論草は生えていないし、畑や農作物の気配は当然無い。

そして、その合間に気味の悪い、萎れた、くたびれた森が幾つも点在し、曇り模様も相まってその状況は連続殺人でも起こりそうな、起こすならばうってつけの舞台と言える。

視界奥には山も広がっていた。

が、これも前者同様に草木の気配は無く、岩の塊というのが相応しい。



「酷い……………。」

そう言った後、言葉を失い、立ち尽くしてしまったシェリー君。

唇は震え、顔は蒼白、手足は硬直していた。

本来ならば優しい言葉でも掛けるべきなのだろうが……………………。

「シェリー君、ショックなのは解るが、だからと言ってここで立ち尽くしてぼぅっと見ていれば何かが解決したり、変化したり、このあれた大地に緑が芽生えるなんていう事態の好転が起こる訳ではない。

問題を解決したければ足を動かすんだ。一歩進むも、一歩戻るも良い。が、悪い状況下で一歩も動かないのは悪手でしかない。

さぁ、先ずは帰ろう。否、進もう。この状況の原因が解らねば解決は出来ない。」

奮い立たせる。否、歩かせる……………か。

鬼だと言われるだろう。

非道だと思うだろう。

それでも、私はそう在る。

私は鬼で非道で悪魔で狡猾で極悪で……………そして私はシェリー君の誰よりも味方であり続けよう。


唇は震えて顔は蒼白のまま。

しかし、


一歩

踏み出す。


一歩

また踏み出す。


ゆっくりではあるが、確実に一歩ずつ、先へと、向かっていった。

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