家政婦辞めようと思います
今話も読みにきてくださってありがとうございます。
やっと家政婦辞めます?たぶん?
相変わらず誤字脱字が多くてすいません、報告お待ちしております。
一迅社様より「地味な私が転生したら王太子妃の取り柄のない妹だったので、自立の為に頑張ります」の書籍化が決まりました。発行をお楽しみに。
どうやって家の前まで帰ってきたか、はっきり覚えていない。
途中でルチアが彼女の家に泊まったらどうかと言ってくれていたが、一人になりたくて断った事は覚えている。
もう泣いてもいいだろうか。
レオニス様の家が見えた途端、私の涙は溢れ出した。
「えぐっ。レオニス様っ。王女様と結婚しちゃうのかなっ」
涙が止まらず、私はその場にしゃがみ込んだ。
「大丈夫かい? 具合が悪いのか?」
聞いた事のある声に、涙でぐちゃぐちゃになった顔をあげると、そこには心配そうな顔のメリンダさんがいた。
「メリンダさん…」
「ティナじゃないか! どうしたんだい? どこか痛むのか?」
私は涙を手の甲で拭くが、一向に止まらない。
「身体は大丈夫です……」
心は激しく痛むけれど。
「何かあったのかい? とりあえずここじゃなんだから家に入れてくれないか」
私は小さく頷くと、メリンダさんの後に続き、よろよろとレオニス様の家に入った。
「ティナ。まずは落ち着く事だ。そこに座んな。お茶は私が淹れるから」
お言葉に甘えてリビングのソファに座る。
メリンダさんは慣れた様子でカップを出してお茶を入れ始めた。
メリンダさんはレオニス様の昔馴染みなので、この家にも何度かきたことがあるのだろう。
「さあ、飲みな。カモミールティーがあったから淹れたよ」
「ありがとうございます」
なんとか涙を止めることに成功した私はメリンダさんの淹れてくれたカモミールティーを少しずつ飲んだ。
「ところでレオニスは今日は遅いのかい?」
レオニス様の名前を聞いただけで目の奥がツーンとして、やっと収まった涙がまた溢れそうになる。
「なるほど。ティナが泣いていたのはレオニスのせいなんだね」
メリンダさんが怒ったように言ったのを聞いてハッとする。
「レオニス様が悪いのではありません。私が勝手にショックを受けだだけなんです」
そうだ。私が勝手にレオニス様を好きになって、勝手に失恋したんだ。
「祝福できると思ってたのにな……」
レオニス様が幸せなら、陰ながら見つめられればそれでいいと思っていたのに。
こんなに辛いなんて。
「でも、違ったんだね」
「ええ。二人の仲睦まじい姿を見るだけで、辛くてたまらなくなってしまったんです。……私、レオニス様の家政婦を辞めようと思ってます」
レオニス様がルーン王国に行くのならばもちろんついてはいけないし、この国に残るとしても私の居場所はないだろう。
「それで後悔しないのかい?」
「ええ。レオニス様が帰ってきて、話を聞いてから辞めるのがいいんだってわかってはいるんですが、今はまだレオニス様のお話を聞く心の準備ができないんです。だからレオニス様が戻ってくる前に、この家を出て、一度冷静になりたいと思います」
メリンダさんは自身の淹れたカモミールティーを一口飲んだ。
「しつこいようだが、もう一度確認するよ。レオニスは、ティナが思ってることと違う話をするかもしれないよ? それでも本当にあの子の帰ってくる前にこの家を出るっていうのかい?」
「はい。レオニス様のお話は必ず聞こうと思います。ただ今は……少し時間が欲しいんです」
私は真剣にメリンダさんを見た。
「とりあえず、二、三日街を出て、その後どうするか考えようかなと。今この街は、レオニス様とレティシア王女の噂でもちきりなので」
私はなんて卑怯なんだ。
レオニス様が選んだ人を今すぐには祝福できない。でも、いつかきっと。気持ちの整理をつけて祝福したいと思っている。
「それじゃあ、ウチにおいでよ」
「へ?」
メリンダさんのいきなりの申し出に思わず変な声が出てしまった。
読んでいただきましてありがとうございました。
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